人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

保育園で流しそうめん

今週のお題「そうめん」

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もし子供に戻れたなら、ぜひやってみたい流しそうめん

梅雨なのに、連日晴天で日傘が手放せない日が続いて変だなあと思っていました。そしたら、気象庁によるとまだ梅雨入りしていなくて、本当の梅雨は来週あたりから始まるのだそうです。実際は平年よりも遅くなると言うわけです。昨日保育士をしている友達に電話したら、「来週はそうめん流しだから晴れて欲しいのに」と嘆いていました。「そうめん流しって何なの?」と聞いたら、勤めている保育園の催しで、子供たちがとても楽しみにしている行事でした。でも、私としては「保育園にそんなスペースあったっけ?」とか「道具はどうするの?」とか疑問がムクムク湧いてきたのです。

 彼女の勤めている保育園は保健所と養護学校がある建物の中にあって、2階は各組の園児の部屋になっているのですが、3階には広々とした園庭があって、自由に外遊びができる空間になっていました。プールの季節になるとビニールプールを並べて、子供たちは水遊びをします。そうめん流しの日は子供が遊ぶ傍らで、器具を組み立てて先生たちは準備をします。流れるプールならぬ、流れるそーめんなのですが、そうめんは手動で先生たちが流します。すると、今か今かと待ち受ける子供たちからワァッと歓声が上がりました。みんなゲーム感覚で競うようにそうめんを掬おうとします。そうめんがなくなると、先生がまた流す、その繰り返しであっという間に時間が過ぎていくのです。

 子供たちの中でとりわけ元気な声を上げているのが、栗毛のくるくるした髪で目が大きい男の子でした。その子の父親はフランス人で母親は日本人でした。ハーフなのでかわいい顔をしているし、日本人の子供たちの中に居るとどうしても目立ってしまいます。名前もとても長くて、たしか、ガブリエル・ロックトマー・健作君でした。もちろん、健作くんは日本語がペラペラなのですが、母親の悩みはそこにありました。彼には3人の兄がいて、保育園に家族で来た時に見たのですが、みんなとてもよく似た顔をしていました。当然、家ではフランス語なのですが、彼は日本語が好きすぎてフランス語を話そうとしないのです。もちろん、家族の話の内容はわかるのですが、自分からはフランス語を話すことはめったにありません。

 「将来はフランスに帰らなければならないのに、もしその時話せなかったら困ってまう。どうしたらいいのだろう」というのが母親が最も心配することでした。子供をバイリンガルにするのも大変なのだなあとまるで人ごとのように思っていました。新年度になって気づいたのですが、彼はいつの間にか保育園からいなくなっていました。考えてみると、入園の時はみんなに「はじめまして」と挨拶するのですが、いざ去るとなると「さようなら」の一言もなく突然いなくなるのです。お別れ会もなく、保護者に何の連絡もないので、「そう言えばそんな子いたね」で済ませて終わりです。幼稚園と違って、親も何かと忙しいので他人に構っているわけにもいかないようです。

 お盆が近づくと、だんだんと先生たちの機嫌が悪くなります。子供を広いホールで昼寝させるのですが、寝かしつけた後控室でみんなでお昼を食べている時でした。ある先生が「お盆休みくらい子供と一緒に居てあげればいいのに」と言うと、別の先生が「本当よね、子供と一緒に居たくないのかしら?」と同感だというように頷きました。最初は先生たちが言っていることがどういう意味なのか全く理解できませんでした。でも話を聞くうちに先生たちの真意が少しずつ分かってきました。保護者達がお盆なのに皆休みを取らず子供を保育園に預けようとしていることをけしからんと思っているのです。先生たちの立場からしたら、仕事にかこつけて預けっぱなしでは子供が可哀そうではないのかと怒っていました。せっかくの夏休みなのだから、どこかへ旅行に行くなり、近場で過ごしたりして、親子の時間を満喫して欲しいと願っているのです。きっと親たちは保育園の先生たちがこんな風に自分たちを見ていると知ったら、間違いなく仰天してしまうでしょう。

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