人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

ハングル検定試験で違和感

今週のお題「試験の思い出」

終始無言は何のため?それとも、それが普通なの?

 試験での思い出と言われても、これと言って特別な何かがあるわけではありません。でも、今でも気になる、いや、今となってはどうでもいいことなのですが、あれは一体何だったのだろうと思うことがあります。それはかれこれ10年ほど前に受けたハングル検定試験の日のことです。今では信じられませんが、あの頃は世の中は韓流ブームで盛り上がっていました。テレビの番組表を見ても、多くの韓国ドラマがこれでもかというぐらい放送されていて、現在の動画サービスなど不要な状況でした。御多分に漏れず私も韓流の波に晒され、いつの間にかその海にどっぷりと浸かっていました。

 断わっておくと、私は世の中の人が熱狂していた『冬のソナタ』にはたいして心を奪われませんでした。周りの友だちの話を聞いても、見てみようとも思いませんでした。でもある日テレビで放送されていた『ソンギュンガンときめきスキャンダル』を見て、パク・ミニョンさんの愛らしさに魅了されてしまいました。こんな可愛らしい人が世の中にいるのだろうか、それに男装だと余計に美男子に見えるから不思議です。美しい男、それがまさにパク・ミニョンさんで、この役は彼女しかありえないと思い込んでいたのです。『ソンギュンガンときめきスキャンダル』は私がそれまで持っていた韓国ドラマのイメージを360度ひっくり返してくれました。韓国ドラマに味を占めた私は、それ以来多数のドラマをビデオ予約して時間を作って見るようになりました。

 そもそも私がハングルに興味を持ったのは、『ソンギュンガンときめきスキャンダル』のタイトルの横にあるハングル文字がへんてこに見えて、読めなかったからなのです。ドラマを見るたびにいつもこのハングル文字のことが気になって仕方ありません。何と書いてあるのか、どういう意味なのかどうしても知りたくなりました。知りたい気持ちで頭の中がいっぱいになっていたにも関わらず、新しい変化を嫌う、めんどくさがり屋の私は躊躇していました。

 ところが、ある日ふらっと入ったいつも行く本屋で偶然ある本を見つけました。その本は『超新星と一緒に学ぶハングルブック』で、パラパラ捲ってみると写真も載っていて、何やら楽しそうです。超新星は人気のあるグループのようですが、もちろん私は知りませんでした。私にとってはそんなことはどうでもいいことで、面白そうで、だからこそやる気にさせるエネルギーをくれた本でした。最初は複雑に見えたハングルの五十音表も仕組みがわかるとスルスルと頭に入ってきました。通勤の電車の中でこっそりと文字の形を手で練習していました。ハングル文字を覚えて、やっとハングルの勉強のスタートラインに立てました。実際はそれからが大変で、ハングルは会話では英語のように消える音が存在するところが厄介です。

 語学の勉強のモチベーションを上げるためには何より目標を持つことが大切です。私の場合はハングル検定試験の3級に合格することでした。試験の申し込みをしたら、受験票が送られてきて、電車で30分ほどのところにある大学が試験場だと書かれていました。場所がよくわからないので一応下見にも行き、当日は早めに試験場に到着しました。試験開始時間の30分くらい前に指定された教室で、自分の受験番号が印刷された紙が貼られた席で待っていました。教室の席がほぼ埋まりかけた頃、2,3人の係員かと思われる人たちが突然入ってきました。彼らは何やら分厚い包みを抱えていたので、おそらくそれはハングル検定試験の問題と答案のようでした。

 でもなんだかおかしい、こんなときはひとこと「おはようございます」とかの挨拶ぐらいするものなのではとの違和感が私の中に生まれました。でも彼らは終始無言で、彼らのひとりがホワイトボードに今日の試験の日程を書きだしました。「筆記試験10:00~11:00 リスニング 11:20~11:50」。彼らの行動にポカ~ンとさせられた私がホワイトボードに注目していると、今度はいきなり問題と答案用紙が配られました。それで初めてこの試験はこういうものなのだと気付かされました。なんだか変な雰囲気なのですが、誰も驚いている様子の人はいませんでした。再びホワイトボードに目をやると、時間割の下に注意事項として、2,3付け加えられていました。

 その時の目的はあくまで試験に合格することなので、気持ちを切り替えて問題に集中しました。結局、受験生は誰も疑問点を質問する人などいなかったので、彼らはついに一言も発することなく試験場を去ったのです。あんな不思議な体験は私の人生の中で後にも先にもありません。

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