人生は旅

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ふわもこ靴下の魔法

今週のお題「お気に入りの靴下」

f:id:mikonacolon:20211119212156j:plain▲海を見下ろす山の上に広がる村、ボルム・レ・ミモザNHKまいにちフランス語テキストから。

おうち時間を快適にしてくれる魔法の靴下

 もう手元には何一つ残っていないのですが、何年も前に”ふわもこ靴下”が流行りました。ふわもこと言っても当時はそんな名前だったかさえ分からないのですが、とにかく、フワフワしていて、ツルツルしていて、柔らかくて、触ると気持ちいい、そんな素材でできている靴下のことです。靴下の素材はポリエステルだと思うのですが、伸びる生地で出来ているのがまたいいのです。色合いがパステルカラーなので、メルヘンチックで夢があっていいなあと当時は思っていました。白、ピンク、薄いブルーのストライプ、格子柄、それから雪の精など、見ているだけで楽しくなりました。

 店先に並べてあるのを触っていたら、その滑らかな風合いに惹かれて、思わず買ってしまいました。履いてみると、肌触りがよくて暖かい。家で寛ぐのにちょうどいいし、寒い冬を少しだけ快適にしてくれる優れ物でした。なんだか私の心までも温めてくれるような気がしたものです。私が初めてふわもこ靴下を見かけたのは、都心にある小さな用品店でした。店の中に入ってみると、乙女チックな商品がいっぱいあって、もこもこパジャマやトレーナーなど女の子の好きそうなパステルカラー中心の商品が置いてありました。いくら好きでもさすがに外には着ていけない、というよりも家に居る時間を充実させるための物、でもそんなたいそうな目的でなくてもいいのです。充実させなくてもいいいから、楽にゆったり過ごせればそれでいいのです。仕事から帰ってきて、何もかも忘れてホッとできる、リラックスできる、そんなおうち時間を過ごすためのアイテムとしてはうってつけの物でした。

 洋品店の隣にはモナカで有名な老舗の和菓子店がありました。いつかはここでモナカを買って帰ろうと思っていて、いつでも買えるだろうと信じて疑いませんでした。それなのに、ある日久しぶりに通りかかったら、その店も隣の洋品店も跡形もなく消えていたのです。どう考えても場所は間違いないのに、店がないからおかしいと思ったら、○○建設の文字が見えました。どうやら都市計画とやらで再開発の波がこの地域にも押し寄せてきたのでした。あれから店はどうなったのか、どこに引越したのか、さっぱりわからずじまいなのです。昨日まであった街並みが明日もあるとは限らないのだと改めて痛感した出来事でした。

 ふわもこ靴下でふと思い出したのは、昔見た韓国ドラマの「メリは外泊中」です。そのドラマの中で重要なアイテムとして使われていたのがふわもこ靴下でした。恋愛に疎く、また経験もない女子大生を演じていたのはムン・グニョンさんで相手役はチャン・グンソクでした。当時彼は人気絶頂期で私も彼の名前に釣られてドラマを見始めました。このドラマではバンドのボーカルでカン・ムギョルという、なんだか冷たい感じのする役でした。その彼がひょんなことから女子大生と偽装結婚して、同居生活を送るようになってから少しずつ変わっていくのです。氷のように見えたはずの彼の心を溶かしたのは、女子大生のメリで彼らが交わす言葉のやり取りがとても面白いのです。

 二人とも互いに相手に全く興味がないように振る舞いますが、メリは編み物に余念がありません。何を編んでいるのかと思いきや、マフラーで、誰のためかといったらムギョルのためでした。祖母に育てられたメリは編み物が得意で、ムギョルとは対照的に心に温かい物を持ち合わせているのだと感じました。メリが差し出すマフラーに「そんなものいらない!」と放り投げるのですが、後から躊躇しながらも手に取ってみるのです。どんなものかとそのマフラーを首に巻いてみると、ふわっとほんのりした暖かさが伝わってきました。

 ある寒い冬の日にメリは、ムギョルに「これ暖かいから履いてみて」と靴下を手渡そうとします。その靴下がなんとパステルカラーのふわもこ靴下で、その色合いにムギョルはギョッとして拒絶してしまいます。「そんなもの履けるか!」と激怒したのですが、後から思い直してこっそり履いてしまうのです。履いてみたら、まんざらでもなさそうな顔をしています。もうこの時点では、ムギョルの気持ちはメリに傾いていたのです。なぜこのドラマを、おそらく10年ぐらい前のドラマのことを覚えているのかというと、ふわもこ靴下が衝撃だったのです。あれは女子限定だとばかりと思っていたのに、それなのに大人の男性に堂々と勧めてしまう大胆な発想に頭がくらくらしたのです。それってありなの?、そんなことしていいの?と驚かずにはいられませんでした。ステレオタイプな考え方しかできない私にとって、あの場面は目から鱗だったのです。

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