人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

マドリードとのお別れ

ヘルシンキ空港内の物価高に驚愕

 とうとうマドリードを去る日が来た。ヘルシンキへのフライトは10時なので、ホテル・アギールから早朝の6時頃に出発しなければならない。5年前にも来たことがあるとはいえ、バハラス空港内もだいぶ変わっているはずだ。実際に行って見たら本当に様変わりしていた。チェックアウトする前日の夜、街歩きから帰ってすぐにフロントに行った。翌日の早朝に出発しても構わないかどうか聞くためだった。要するに、そんな朝早くフロントに誰か人が居るのか、ホテルがある建物の玄関の重厚な扉は開いているのか確かめたかったからだ。すると、スタッフは顔色一つ変えることなく、「Perfect!」と言う。大丈夫ということだろうが、こんな時はだいたいホテルのスタッフは「No probrem」とかなんとかいうのではないか、などと内心で思う。まあ、こちらとしては大丈夫だと太鼓判を押されて、大船に乗ったつもりになった。これで一つ憂いは消えた。

 実を言うと、前日はどこへ行くより先に、ホテルから15分ほど歩いたところにある空港バス発着所に下見に行った。空港バスのバス停はシベーレス宮殿の真ん前にあって、とても分かりやすい。空港行きだけでなく、各地に行くバス停もあり、公園のようになっている広大な広場には、露店が立ち並んでいた。昼間行ったら、大勢の観光客で賑わっていたが、当日6時ごろ着いた時には、薄暗く、誰もいなくて寂しい限りだった。それでも、空港バスのバス停には、それはひっそりしていて、側に行かないと、「空港バス」だと言うことさえわからないが、大きめのキャリーケースを持った人が数人いて、バスを待っていた。ホテルを出たのは6時10分前だったが、急ぎ足で歩いたら、何と6時5分のバスがちょうど着て、それに乗れた。空港に7時に着ければいいと考えていたが、予想よりはるかに早く着いた。

 初めての海外旅行の時に、ガイドブックで「空港には出発時間の3時間前には着いておきましょう」というアドバイスを見つけて以来、その教えを頑なに守っている。それに、空港のカフェかなんかで、お茶を飲み、行き交う人々の様子を眺めるが大好きだ。最近は昔と比べて、航空会社のチェックインの時間が早まっているようで、早く行きすぎてどう時間を潰せばいいのか困ることなどないようだ。さて、無事マドリードを飛び立った飛行機は5時間かけて、ヘルシンキのヴァンター空港に着いた。機内で以前と変わったことがあった。それは、5年前は、機内で有料ではあるが、カップヌードルやマフィンなどの食べ物の販売があったはずなのに、今回はそのサービスは無くなっていた。低脂肪で健康に配慮した薄味のカップヌードルはなかなか美味だったし、マフィンも値段に見合った上質なものだった。私は秘かにそれらを食べるのを楽しみにしていたので、落胆したことは言うまでもない。

 無いものねだりをしても始まらない。それで、私はこう考えた、ヘルシンキの空港で何か食べればいいや、と。そりゃ、もちろん空港の食べ物は何でも高いことは知っていた。だが、何と言っても旅行の最後なのだから、少しは贅沢してもいいのではないかと、散財することに躊躇しなかった、これまでは。だが、実際に空港内を見渡してみると、何か変だ、やたらとどこの店もひっそりしすぎている。以前はムーミンショップも、マリメッコも、あちこちにあるカフェやブラッスリー、ラーメン屋さん、寿司やうどんがある和風の飲食店も、大勢の人で賑わっていたはず。

 それでも、空腹な私は何か食べたくて、人気のない店のショーケースを覗いてみた。そこには10㎝角ぐらいの四角いピザが5.6枚並んでいて、さっぱり売れていない。ピザと言っても、表面にはたいして具は乗っていない。美味しそうにも見えない。日本と比べることに何の意味もないが、日本ではさしずめ200円程度で買える代物だった。それなのに、値段を見た瞬間、ワア~ッ!と声を上げそうになった。8.5ユーロ、だが目の前にある数字がこの世のものと思われず、何度も見返し、穴のあくほど見つめてしまった。日本円に換算する気になど、到底ならない値段だった。なるほど、と納得した。道理で皆が利用しないはずだ。例えば、以前1杯千円だったビールが、今回は2千円になっていたとしたら、果たして人はどう思い、どう行動するだろうか。その答えが今回の空港の光景に他ならなかった。

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