人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

ミチコさんとの不思議な縁

今週のお題「わたしの実家」

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子供はいない、でも代わりに犬と猫がいて寂しくない

 私の実家は、父が亡くなり、兄も4年前に亡くなって、今ではもう兄のお嫁さんのミチコさんだけになりました。ミチコさんが一人で暮らす実家に今年も帰省しました。あちらに行ったのは12月30日で、前日に電話をしたら今雪が10㎝ほど積もっているとのことでした。慌てました、もしまだ雪が残っていたら、迎えに来てもらえないのではと思ったからです。でも幸運にもあっという間に雪は溶けて、私の心配は杞憂におわりました。

 一人暮らしは「寂しくない?」と同情されることもあるミチコさんですが、本人は全然そうではありません。もちろん、犬1匹と世話の焼ける猫2匹と一緒に生活しているせいもあるのですが、今までの生活がストレスに満ち溢れていたからです。聞くところによると、世の中には夫が亡くなって悲しくてどうしようもない妻と、解放感で天にも昇るような気持ちになる妻がいるそうです。ミチコさんは後者の方で、「こんな幸せがあったなんて!」と電話で話していました。近所の人に「大丈夫?寂しいでしょう」と声をかけられると、まさか「いいえ、全然平気です」とは答えられないので黙って頷きます。少し後ろめたい気持ちにはなるのですが、心の底から湧き上がってくる感情は抑えられません。

 「今まで生きてきた中で一番幸せ!」とはっきり言える、もっともそれは心の中でですが、ミチコさんは毎日”ぐうたらな生活”を送っているのだと笑います。夫がいた時は、しなければならないことがたくさんあって、”夫がいるからこそ自分がいる”みたいな状況でした。本当の意味での自由はなかったのだとひとりになって気づいたのです。もちろん、世の中には夫婦一緒でいるからこその幸せがあることは確かです。でも誰もがそんなステレオタイプな幸福を得られるとは限らないのです。幸せは人それぞれで、夫婦の形も十人十色です。

 天性の楽天家のミチコさんも兄との結婚生活には苦労してきました。私は高校生の時に実家で一緒に生活して、二人の様子をつぶさに見てきたのでよくわかるのです。いつも朝二人はお金のことで喧嘩をしました。兄が小遣いが足りないとかでミチコさんに「もっとくれ!」と要求するのですが、兄の安月給では身の丈に合っていないのです。「あなたの給料では無理、出せない」とミチコさんは拒絶するのですが、すったもんだの末に仕方なくお金を渡すことになるのでした。それと、お金以外にも問題があって、それは昔よく離婚の原因にあげられていた性格の不一致ということでした。性格の不一致というのはいかにも漠然としていて、とらえどころのない言葉ですが、ひとことで言ってしまえば、相性が悪いのです。

 確かに二人の会話を聞かされていると、話が全くかみ合わず、お互いに相手に言いたいことが上手く伝わっていないことがわかります。今にして思えば、二人はそれぞれ自分の考えを曲げずに、相手の気持ちに近づこうと努力しなかったのかもしれません。こう書いてしまえば、なんだかとても簡単そうに思えますが、言うは易く行うは難しです。能書き通りにことが進むわけもなく、10年後に二人は離婚することになりました。それもちょうど父が病気入院している時でした。離婚の話を聞かされた父の嘆きは途方もなく大きくて、ショックからか病状が急変し亡くなりました。

 夫婦仲が悪くても、ミチコさんが逃げ出さず、我慢してきたのには理由がありました。それは結婚した時に勤めていた会社を辞めてしまったので、経済的な基盤がなかったことでした。それとバスが1時間に1本しかない辺鄙な田舎に住んでいるのに、運転免許を持っていなかったからでした。ミチコさんが離婚に踏み切れたのは、友だちから紹介された婦人服販売の仕事が性に合っていたからと、免許を取って車を運転できたからでした。子供という夫婦のかすがいになるものもいないのですから、躊躇する理由はありませんでした。

 兄と離婚したのですから、当然義理の妹である私との縁ももはやこれまでとなるはずでした。それなのに、気づいてみれば、未だに付き合っているのですから、これはもう縁があるとしか思えません。どうしてこうなったかについては長くなるので、今回はやめておきます。

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