人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

ミドルノート

30代の女性4人のそれぞれの人生が興味深い

 先週図書館から、予約した本が取置き中との連絡が来た。その本がこの『ミドルノート』だったが、不覚にもそれがどんな内容の本だったのか、思い出せなかった。なにぶん去年の10月ごろに予約したせいで、すっかり忘れていたのだ。図書館への道すがら、何とかその本の内容を記憶の中から掬い上げようとするが、さっぱりい引っ掛からない。仕方がないので、何の先入観もない状態で、読み進めた。書店にある本には普通帯が掛かっていて、その本がどんな内容なのか、買い手にある程度推測させてくれるのだが、いかんせん、図書館の本は余計なもの?はすべて取り外されている。

 だが、考えてみると、私はその本の持つ何かに惹かれるようにして、予約したのではなかったか。そうだとすれば、その時の自分の気持ちのままに、安心して読んでいいはずだ。あれは、たしか新聞の新刊の広告の宣伝文句に惹きつけられて、これは面白そうだと思った。それで、図書館の予約サイトで検索したら、何とあるではないか、予約数は35だかなんかで、すぐには本を手にすることはできないが、待てばいいだけのことだ。今、ようやく自分の番が回ってきたのだ。おそらく、この機会を逃せば、もうこの本を手にすることはないだろう。なぜなら、私の後には予約している誰それが5万といるはずだから。そんなに人気があることに、正直驚かずにはいられない。大変申し訳ないが、作者の朝比奈あすかさんの名前すら知らなかったから。

 さて、どれどれ、どんな話かとワクワクして読み始めた。飽きっぽい性格の私は、最初から単調で、何の変哲もない話だと、すぐにページを捲る手が止まってしまう。だが、滅多にないことだが、このストーリーにはあれ?と思う箇所があったせいか、どんどん読み進めていけた。この本の物語の中心になる登場人物は4人の30代になったばかりの女性たちで、その中で、私が注目したのは三芳菜奈と岡崎彩子の二人だった。

 三芳菜奈は同僚の拓也と職場結婚していて、マンションも買ったばかりで、幸せ真最中のように見えた。それに菜奈は現在妊娠中で、正社員で結婚していて、家もあるという世の中の独身女性から見れば、妬ましく思えるほど恵まれていた。だが、読み進めるうちに、菜奈は夫の拓也に常日頃から不満があり、それが爆発しそうになっていた。その原因については、拓也が「自分の機嫌を自分で取れない人、要するに、彼はひどく子供っぽいのだ」という表現を使っていた。最初、付き合い始めたばかりの頃は、「本当に私でいいの?」と戸惑い、いつも気を使っていた。自分に自信がなかったし、そのことで後ろめたさが付き纏っていたからだ。同僚から見れば、「あの人はカッコイイよね」と言われるほど、服装も持ち物も洗練されている拓也だったが、いざ暮らしてみたら、毎度毎度喧嘩ばかりしていた。

 なぜなら、拓也はすぐに不機嫌になり、何かと菜奈にいちゃもんを付けて来た。菜奈は誰とでも話せる社交的な性格で、その物事にあまりこだわらないところが菜奈のいいところだ、と拓也は褒めてくれていた。だが、現在では「お前は鈍感すぎるよ」と何度も菜奈をなじるようになった。その度に菜奈は自分の人格を全否定するような言葉を浴びせられ、まるでテレビのCMのようにその記憶が心の中に刷り込まれていった。そうは言っても、彼女は妊娠中で、子どものことを考えて、普通なら我慢するというのが定番だ。だが、彼女は私を含めて読者からしたら、あっと驚くような決断を下すのだ。

 菜奈は離婚を決意する。その理由は、喧嘩ばかりしていたら子供によくないし、それに何よりもう自分が拓也とは暮らせないと分かっていたからだ。菜奈はシングルマザーになることを恐れない。ただひたすら、自分らしく、いや、もうこんな思いはごめんだという不幸からの逃避を目指していた。この菜奈の勇気ある決断に、読者として応援したい気持ちでいっぱいになった。

 もうひとりの女性、岡崎彩子の生き方は菜奈とは対照的で、何とも思っていなかった同僚がいつの間にか結婚の対象になっていく。3年もの年月をかけてゆっくり、焦ることなく、無理をしないでとても自然に結婚という形にたどり着いた。菜奈は彩子のような結婚の形をとても羨ましいと思うのだった。

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