人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

変形性膝関節症じゃなかった   

旅行中に何かあったらどうしよう、と不安が

 いよいよ離陸の日が来週に迫ってきた。一応の旅行準備は整ったのに、心と身体と言葉の準備がおぼつかない体たらくで、不安で仕方がないと言うのが本音だ。海外旅行は4年ぶりとは言え、旅行を計画した10カ月前には思ってもいなかった事態に陥っている。まずは、なんと言っても、一番大事な身体の問題で、疲れを知らないような完璧さが求められる自分の右足が痛いと言うこと。それも、ただ単に痛いだけではなくて、気にしていたらどうかなってしまうレベルの痛みで、いままで意識して悪いことは何も考えないようにしてきた。そうしていれば、刹那的には幸せでいられた。だが、現地を重い荷物を抱え、散々歩き回らなければならないことを想像するだけで、どうしても憂鬱な気分になってしまう。

 それに、以前のブログにも書いたが、10月に入ってすぐに、階段で右膝のズキンという痛みに襲われて、面食らってしまった。あくる日に慌てて、いの一番に整形外科に行って診てもらった。ちょうど、目星をつけていた医院は運悪く休みで、仕方がないので、裏通りにある整形外科を受診した。そこはあまり人が来ないらしく、すぐに名前を呼ばれたので、少し戸惑った。先生は、私の足を一度も触ってみることもなく、「変形性膝関節症ですね」と決めつけた。レントゲンは両方の足を撮ったので、左右を比べて説明してくれたが、素人目には同じにしか見えなかった。痛いことは痛いが、どうにも納得がいかないし、治療の選択肢がリハビリしかないのも変だった。

 それで、旅行前に不安を取り去っておこうと、3カ月ぶりに診療所に行って診てもらった。そこは親子で診療所をやっていて、いつもは息子さんである若先生が主に診療しているのだが、火曜日は父親の大先生の担当になっていた。「あれから(3か月前のベーカー嚢腫のことを言っている)どうですか」と聞かれて、「膝も曲がるようになって、よくなったのですが、今度は膝がズキンと痛むのです」と答える。さらに「あの世間でよく言われている、変形性膝関節症ではないかと思うんですけど」と付け加えた。先生は「う~ん、そうかもしれないね」と言うと、診察台に横になるように私に指示する。

 私の右足を曲げたり伸ばしたりして、触診すると、「あれ?何かちょっと引っ掛かっているぞ」と独り言をつぶやいた。そんなことを聞いても、気になるが何のことやらさっぱりわからない。また、「ちょっと横向きになって見て」と言って、さらに別の角度からも触診をしてくれた。それが終わると、今度はレントゲンを撮ってくるように促された。数分後、待合室で待っていると名前を呼ばれて診察室に入った。開口一番、先生に「骨は凄くきれいです」と言われて、大いに喜ぶが、やはり、「では、なぜ痛みが出るのか」と言った疑問が頭の中を駆け巡った。

 「それなら、なぜ痛いのですか」というストレートな私の問いに、先生は「それは関節の中で何か問題が起こっているからだ」と説明してくれる。例えば、軟骨がすり減っているとか、何かの炎症が起っているとかで、それが痛みの原因になっていると考えられるとのこと。とりあえず、今のところは痛み止めで様子を見るしかないが、どうしても、痛みが続くようなら、ヒアルロン酸注射をしましょう、と言う。その注射は効果があるものなのか尋ねると、効く人もいれば、そうでもない人もいると、正直な答えが返って来た。

 それから、先生は、今後してはならない2つのことを肝に銘じるようにとくぎを刺した。それらは、今後膝を守るためにとても重要な約束事だった。一つ目は、今後絶対に正座をしないことで、正座というものは西洋人にとっては拷問にも等しい行為なのだと言う。考えてみると、テレビでも映画でも、西洋人が正座をしているところはあまり見たことがない。それに、椅子に座るというのは正座よりもはるかに膝に優しい行為なのだ。先生の言うことはもっともなのだとわかってはいても、正座は礼儀正しい行為だと刷り込まれて育ったので、俄かには受け入れがたいが、それでも、自分の膝を守るためにはしないように努力するしかない。

 二つ目は、階段を降りる時に膝に負担をかけないようにゆっくりと降りることで、私は現にこれと反対のことをやっていた。というのも、私の場合は階段を上るときだけ、膝がズキズキするのだが、下りは平気なので、やりたい放題早く降りていた。これからは先生のアドバイスに従って、できるだけ膝を労わるようにと意識することにしよう。いずれにせよ、私は自分が、いつも噂に聞いていた、変形性膝関節症でなくて本当によかったと、ホッと胸を撫でおろした。

mikonacolon