人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

自分の親に読んでほしかった本

大人にも自分自身の感情を扱う練習が必要

 この本のことを知ったのは、新聞の新刊書のコーナーで、世界46か国で200万部のベストセラーになっていると書かれていた。「子どもとの関係が変わる」との副題も付いていて、俄然、興味津々となった。そうなると以前ならすぐに本屋に飛んで行ったが、現在ではパソコンで図書館のサイトにアクセスして、本の所在を確かめる。その本がなかったら、降って湧いたような好奇心の芽を引っ込めるか、あるいはどうしても読みたかったら、自腹で買えばいいだけのことだ。だが、幸運にも図書館に『自分の親に読んでほしかった本』は存在し、もちろん予約数30くらいで、すぐには手にすることはできないが待てば必ず読めるのだとわかった。

 そうやって待っていたら、意外と早く自分の順番が来て、今こうして手元にある。新聞の広告にあった「子供の感情を無視すると、どうなるか?」という宣伝文句が目を惹いて、だいたい想像は付いたが、実際に読んでみると目から鱗だった。それは「成人のうつの最も一般的な原因は、その人に現在起きているもの事ではなくて、子どもの頃の親との関係で宥められたことがなかったせいなのです」という記述で、子どもと親との関係は成人してからなお多大な影響を与えるのだと知って恐ろしくなった。この本では子供の感情をあるがままに、真剣に受け止めることの大切さを強調していて、その対処の仕方を理路整然と、懇切丁寧にわかりやすく説明してくれている。

 「あなたが子供の感情に敏感に反応すれば、子どもは自分の感情との付き合い方を覚えます」と書かれているが、さて、具体的にはいったいどうすればいいのだろうか、という疑問が沸き上がる。だが、心配はいらない、ちゃんと対処法は書いてある。だがそれは今のコスパ最優先の時代にあってはしびれを切らしてイライラしてしまうほど、時間を要することなのだ。現代人は誰しも時間がない。時間がないのにも関わらず、子どもと真っこうから向き合わなければならない。刹那的な思いに誘惑されて、子どもの感情を無視したら、大事な我が子が傷を負うとなれば、悔やんでも悔やみきれない。

 本書の「感情に向き合う」という章に私は最も注目して何度も読み返した。このブログを書く当たって、メモを取ったのだが、その章を丸ごと書きたいくらいの気持ちにさせられた。だが、それでは単なる解説になってしまってつまらない。人にはそれぞれ感じ方があって、私が感じたように皆が感じるとは限らない。特筆すべきは、「親は子どの感情の受け皿にならなければならない」ということで、それについては「自分の感情に、それがたとえ、どんな強い感情でも、居心地の悪さを覚えなくなることが、子どもの感情を受け入れ、宥められるようになるための鍵です」と説明がされている。子どもは自分の感情を親に聞いてもらい、宥められることで安心する。無視されたり、誤魔化されたり、何か他のことで気をそらされたりすると、その感情は行き場を失くして、心の中に居座り続ける。大人目線で考えたら過ちを犯すことになりかねない。子どもに寄り添って、と言ってもこれが口で言うよりはるかに難しいのだが、こちらはとっくの昔に子供の心なんて忘れていて、子供だった頃の気持ちを想像することさえできないのだから。

 やることが多すぎるから、時間がないから、子どもの言うことにいちいち取り合ってなどいられないという言い訳は通用しない。この本を読んで子供の頃のことを考えてみた、なぜ自分の親はあんな対処法しかできなかったのかと。大好きな親に自分のことを馬鹿にされ、否定されて、どんなに悲しかったかを思い出してみた。この本に書かれていることとはほぼ真逆の対処法だったが、それは彼らが子供を愛していなかったわけではなく、正しい、子どものための向き合い方を知らなかっただけのことなのだ。この本のせいで、私は開けたくなかったパンドラの箱を開けさせられたようだ。だからと言って、真実に目を背けることはできない。この本はこれから子育てをする人たちにとって大いに役立つことは間違いない。親と子の最善の付き合い方を学べるのだから。ただし、実践するにあたっては親の相当な覚悟と忍耐が必要になり、簡単な事ではない。

mikonacolon