人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

ブタをペットにする人

最初は理解不能、でもそのうち、これもありかなあと

 帰省して、居間でテレビを見ていたら、あの「家ついて行っていいですか」がやっていた。いつも思うのだが、人にはそれぞれ人生におけるドラマがあるのものだなあと深く感動することが多い。世間で言われる幸福というものを測る物差しはひとつではないと実感できる。今回登場した人たちも個性的で、自分なりの幸せを追求していた。

 まずはブタをペットにしている若い女性について行ったら、なんと8LDKの豪邸だった。この人はいったい何者?と驚愕したら、父親が不動産関係の会社を経営していて、ある日突然「いい物件があったから、お前は明日からここに住め」と言われたらしい。終始上機嫌で、幸せ一杯という雰囲気のその人は、まるで新婚さんみたいだ。子どもを乗せるカート型の乳母車にブタが2匹、いや、2頭乗っていた。足元にもプードルが2匹いて、いつも皆で散歩をしていると言う。ブタと一口に言っても、この2頭のブタはちっとも豚らしくない。なぜなら、毛が真っ白でフワフワしていて、とても清潔そうで、可愛らしく見えるからだ。だが、やっぱり、顔は豚以外の何ものでもないので、少し後ずさりしてしまう。ブタの顔を直視できないのだ。

 それでも、飼い主としては、可愛くて仕方がないようで、メロメロなのがよくわかる。でも、なぜブタをペットにすることにしたのだろうか。その理由を聞いてみると、以前海外に行って、豚の丸焼きを食べたときのカルチャーショックからだった。その時彼女はこんな風にして食べられてしまう豚が気の毒に思えた。それで、自分でブタを飼ってみようと思ったというのだが、正直言って、その気持ちがよくわからない。

 それはさておき、家の中には大きくて、こんがり美味しそうに焼けた豚の丸焼きのクッションが置いてあった。何ともユニークな発想の持ち主だが、驚いたのはブタにエサをやる場面だった。キュウリをちぎっては無造作にポーンと床に投げたり、リンゴは丸ごと放り投げる。なんともダイナミックなエサやりの風景にしばし唖然となった。彼女の説明によると、こうしないと喧嘩になってしまうからだ。ブタがりんごにかぶりつくと、シュワッと果汁が辺りに飛び散って、当たり前のことだが、犬のような体つきをしていても、やはりブタはブタである。こうなると、フワフワの犬のような可愛らしさがたちまち半減するのは否めない。

 毎日こんなことが繰り返されるのかと思うと、他人事ながら、部屋の掃除が大変だなあと、余計な心配をしてしまう。下世話な話だが、一番心配になったのは、やはりトイレのことだ。ブタと言えば、私の頭の中には子供の頃田舎の豚小屋で飼われていた何頭ものブタが思い浮かぶ。彼らは自分たちの排せつ物の中に住んでいた。ブタとはそういうものというステレオタイプな思い込みしかなかった私だが、後から本当はブタは綺麗好きなのだと知って目から鱗だった。

 さて、ペットのブタのトイレ事情はどうなっているのだろうか。2階の部屋を案内してもらっている時に彼女が階段の踊り場から下を見下ろしながら、「ほら、いまおしっこしてますよ」と言う。なんと、ブタはペットシートの上にちゃんと排泄していた。なるほど、まるで犬のように、躾ければ何の問題もないらしい。もしかして、ブタは犬よりも頭がいいのかもしれない。そんなことを思ったのは、実家の犬がいつまでたっても、ペットシートにうまく排泄できないでいるからで、未だにはみ出すことが多いからだ。確かに白くてフワフワの毛は見た目もいいし、可愛いとさえ思える、ただし、あのブタの顔には到底慣れることができないので、飼ってみたいとは思わない。

 特筆すべきは、「この生活をずうっと続けていけたら幸せです」というブタをペットにする彼女の発言だ。番組のスタッフの「結婚とかは考えているのですか」という質問に、「この生活を奪われるくらいなら、必要ありません」と即答していた。彼女があまりにも幸せそうだったので、こんな幸せもあるのだなあと一瞬、納得した気持ちになった。

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