人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

犬や猫への贈り物

怖がって逃げるだけ、でもミチコさんには大うけ

 私は帰省の時はいつでも、実家にいる犬一匹と猫二匹のためにお土産を持って行く。重い荷物を持つのが鬱陶しいので、あらかじめ宅急便で段ボール箱2個を送りつけることにしている。だが、かわいい子たちへのお土産を入れるスペースは見当たらないので、自ら持参する羽目になる。去年の夏はシャボン玉を持って行った。まあ、私にしてみれば、犬や猫はその辺にいる子供と変わりない存在で、子供が面白がるのなら、当然あの子たちも喜ぶだろうと考えていた。映画が大ヒットしていた「ゴジラ」と見間違えるような怪獣が火を噴くがごとく、無数のシャボン玉を発射する。一度ボタンを押すと、私のようなおばさんでも、わあ~と歓声を上げて、何が嬉しいんだか面白がっている。それで、勝手に犬や猫もさぞかし興奮するだろうと想像していたら、結果は無残なことになった。

 というのも、面白がっているのは、義姉のミチコさんと私の人間コンビだけで、彼ら犬猫は一目散に逃げて行ったから。ただ、その中でも一番若い猫のおチビだけは興味津々でキラキラ光る眼をキョロキョロさせながら、好奇心でいっぱいの様子だった。じっと目の前を飛び交うシャボン玉を見つめていたが、突然両手でぱちんと捕まえようとした。当然のごとく、シャボン玉は消えて、猫の手には何もありはしない。そのあれ?と困惑して、首をかしげるしぐさが可愛いくて、おかしすぎて笑い転げた。犬やもう一匹の猫であるノンが逃げてしまって、せっかくのお土産が台無しになったと思ったら、おチビが反応してくれて、慰められたと言うわけだ。

 どうやら人間が良かれと思って、買って持ってくるものは実家の犬や猫には不評らしい。今回は彼ら喜ぶだろうと思って、おもちゃのピアノとボタン電池で動く昆虫のようなおもちゃを持って行った。ピアノは年甲斐もなく、鍵盤を押すと、横にいる猫が口を開けるのが、たいそう気に入った。なかなか面白い。音が鳴る度に猫が口を開くのを見たら、きっと犬や猫がびっくりして、面白がるに違いないと踏んだ。ところが、現実は犬や猫たちはピアノの音にびっくりして、また逃げてしまったのだ。好奇心の塊のような、あのおチビまでもが一目散にいなくなったのには落胆は隠せない。あの子だけはただ一人、いや一匹、見どころがあると期待したのに。

 昆虫のおもちゃにしても、色はカラフルだが、一瞬、台所にいるあの嫌な奴、○○〇〇を連想させたが、そんなとんでもない発想を振り払い、売れているようなので買ってみた。ところが、あれは畳や絨毯の上では走行不能で、つるつるの床でなければ使い物にならないことが家で試してわかった。それでも、せっかく買ったのだからと、実家に持って行って、猫の前で動かしてみた。少しだけでも、遊んでくれるかと期待したが、目の前で昆虫がバタバタするのを見つめるだけで、触ろうともしない。「何なのこれ、ちっとも面白くない。こんなんで喜ぶとでも思ったの?」とばかりに”明後日の方向”を見ていた。猫というものは動くものにたいしてどん欲だとばかり勝手に思い込んでいたが、見事裏切られた。実を言うと、怖がって逃げるのかとも思っていたが、あれくらいでは以外にも動じないものらしい。

 一応、犬や猫用のおもちゃなら、少しは役に立って欲しいのだが、実家の犬や猫には通用しなかった。よくYouTubeでネコや犬の動画を見ていると、そこに登場する犬はぬいぐるみをくわえたり、ボールで遊んだりするが、実家の犬は知らんぷりで無反応だ。猫にしたって、売っているおもちゃより、段ボール箱をスリスリ、カリカリする方が大好きだ。今回はもはや既製品のおもちゃは実家の犬や猫には必要ないとつくづくわかった滞在だった。それでも、今回はある発見があった。それは驚くべきことに、義姉のミチコさんがおもちゃのピアノに食いついたことだった。「こんなくだらないものを買ってきて・・・」と馬鹿にされるかと思ったら、嬉しそうにピアノで遊んでいるではないか。よく聞いてみると、子供の頃から、音楽が大好きで、ピアノに憧れていたと言う。ミチコさんはBSで韓国ドラマや中国ドラマを見るのが好きだが、その時に通販のキーボードの宣伝がやっていて、興味津々だった。「ピアノをやってみたい」とは思っていたが、いまひとつ踏み切れなかった。さて、今回はどうだろうか。私が持って行ったおもちゃのピアノはミチコさんの背中を押してくれるのだろうか。楽しみだ。

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