人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

かぼちゃプリン

想像をはるかに超えたプリンに唖然として

 NHKの夜ドラマ『作りたい女と食べたい女』の中で、一番驚かされたのはかぼちゃプリンのエピソードだった。今まで熱心に誘うのは野本さんの方で、お相手の春日さんは仕方なく、いや快くその申し出を受け入れているかのように見えた。だが、その日は春日さん自らが「もし良かったら、週末に車で遠出しませんか」と誘ってくれたのだ。二人は早朝のドライブを楽しみ、ファーマーズマーケットで採れたての野菜をどっさり買い込んだ。スーパーにおいてある物とは一線を画した、安くて新鮮な野菜の数々に野本さんは思わず歓声を上げた。どれもこれもが野本さんにとっては宝の山に思えてきて感動しまくっていた。

 その中でも二人の目を引いたのはこれでもかと言うくらい大きなかぼちゃだった。さてこの大物をどう料理しようか、二人は穴が空くほどそれを見つめて考え込んだ。口には出さなかったが、以心伝心、気持ちが自然と通じたのか、二人の答えは同じだった、つまりかぼちゃプリンが頭の中に浮上したのだ。だが、かぼちゃプリンと言っても、そんじょそこらにある”あれ”ではなくて、本物のかぼちゃプリンだったから視聴者である当方は仰天した。春日さんの「どうせなら、まるごとプリンにできないですかねぇ」という野本さんに訴えた、あの一言がきっかけだった。「できますよ」という野本さんの頼もしい返事。この時の当方の正直な気持ちは「そんなとんでもないことが本当にできるの?」で半信半疑だった。

 ところが、”丸ごとかぼちゃプリン”のミッションは着々と進行していった。まずはどデカいかぼちゃを丸ごと電子レンジに入れてチンをした。こうすると簡単にかぼちゃが柔らかくなるらしい。実を言うとこのやり方を私はすでに知っていたので、たいして驚きもしなかった。以前、病院で栄養士をしている友だちがかぼちゃを切るときに使ったことがある裏ワザだった。一個丸ごとのかぼちゃを包丁で切るときに硬くて上手く行かないことがあった。そんなとき、電子レンジでやるといいよと教えてくれたのだ。かぼちゃ丸ごと一個をチンするなどというアイデアをいったい誰が思いついたのだろうか。そんなとんでもない、ユニークな発想ができるなんて素晴らしい、まさに脱帽せざるを得ない人だ。

 野本さんはチンしたかぼちゃの上の部分を包丁で難なく切り取ると、スプーンでかぼちゃの中身を取り出した。種は捨てて、残りの柔らかい部分を牛乳と砂糖、ゼラチンを入れてかき混ぜたら、普通なら冷やして終りだ。でもこの場合はそれでは終わらず、中身をくりぬいて置いたかぼちゃの空洞部分に注ぎ入れる。これぞ、かぼちゃとかぼちゃプリンのドッキングで、正真正銘の”かぼちゃプリン”の初期段階が出来上がった。後はまた電子レンジで加熱して、よ~く冷ましたら、完璧なかぼちゃプリンが完成する。

 ドラマではなんとも立派な外見のかぼちゃプリンを春日さんが淡々と食べ切る場面があって、拍手したくなるほど圧巻だ。考えてみると、かぼちゃとプリンを同時に食べるなんて経験は、滅多にできることではない。ただ、それでは真似をしてやってみたいかと聞かれると、本音はそうでもなくて、別々に味わいたいというのが正直な気持ちだ。普通のかぼちゃプリンは皮は捨ててしまうのだから、皮ごと食べられて、今流行りのSDGsを実践していて理想的だ。種しか捨てる部分がなく、あとは丸ごと消費できるのがここでのかぼちゃプリンの最大の長所で、しかも美味しいというおまけまでついてくるのだから、かぼちゃ好きには堪らないのだろう。

 私にとっては、こんなかぼちゃの食べ方あったんだと気付かせてくれたことがまずは新鮮な驚きだった。実を言うと、最初はこのドラマ『作りたい女と食べたい女』はどうせ今までの食べ物関連のドラマとたいして変わり映えしないだろうと高をくくっていたし、期待もしなかった。だが、見終わった感想はというと、想像以上に面白く目から鱗だった。

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