人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

喫茶店で”化石”を発見

今週のお題「わたしの実家」

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通学路を通ったら、昔の喫茶店がまだあって

 ついこの間帰省した時のことです。お目当てのカフェに行こうと、気乗りしない様子の兄嫁のミチコさんを誘って車に乗せてもらいました。ミチコさんは意外にも最近のガソリンの高騰にさほど困った様子は見せませんでした。「大丈夫、私は安い所を知っているから」。でも市街地を通っていたら、渋滞しているわけでもないのに、車の列が続いていて動こうとしません。どうしてこんなことにと戸惑っていたら、どうやらガソリンスタンドの順番待ちのようでした。ミチコさんは「あそこは他よりも少しお得なところなのよ」と言いながらすぐに隣の車線に移動し、スイスイと車を走らせます。何も知らなかった時は待っても待ってもいっこうに車が動き出す気配がなくイライラしていたそうです。でも事情が分かってきた今では「またなのね」で終わりです。

 実家で過ごした元旦は朝起きると雪が10㎝ほど積もっていて、一面新世界のようでした。何もかもが汚れなく純白の世界で静けさに包まれていて、新年にふさわしい日になりました。でもひとたび太陽の光に晒されると、あっという間に魔法にかけられたかのように元の世界に戻りました。朝からテレビでやっていた実業団対抗の駅伝を見ていたのですが、それが終わる頃には外の景色は普段と変わらなくなりました。ふとカフェラテが飲みたくなったので、ミチコさんに「どこか行こうよ」と言ったら、「今日はどこもやっていないんじゃない?」。それに時計を見たらすでに3時を過ぎています。どこかやっている店があったとしても4時まで、あるいは5時までやっているかどうか、怪しいものです。それでも気分転換に外の空気を吸いに行きたくて、譲らない私に根負けしてミチコさんは重い腰をあげました。

 お気に入りのカフェが休みなのはわかっているので、どこかやっている、どこでもいいので営業している店を捜します。いつものコースとは違う道を走っていると喫茶店やらお食事処の看板がちらほらあるのですが、どこも灯りが付いていないし、駐車場に車が一台も停まっていません。どう見ても休みに違いありません。「やっぱり元旦は皆休むのね」と諦めかけたその時、「サンパウロ」と書いてある看板を見かけました。店の灯りもついているし、駐車場に2,3台の車も停まっています。「サンパウロ」という名前で遥か昔を思い出しました。実をいうと、私は高校時代この「サンパウロ」という喫茶店を横目に見ながら通学していたのです。でも自転車を漕ぎながら、遅刻しないようにわき目もふらずに通過していただけのことでした。入ってみたこともないし、また入ってみたいとも思いませんでした。コーヒーが好きではなかったあの頃は興味がなかったのです。

 「あの時の喫茶店がまだあるんだ!」となんだか不思議な感覚に襲われました。感激しているわけではないのですが、とにかく続いていることに少し驚いたのです。懐かしさでいっぱいになって車を降り、店に入ろうとすると、外にあるウインドウにメニューのサンプルが飾ってありました。一目見て衝撃を受けました。それらはすべて白くて半透明だったからです。ウインドウの下の部分を見ると、年月の重みを感じずにはいられないような茶色のシミが浮きだっていました。昔のフォークソングでいうなら、さしずめ「時は流れた!」とでも言いたい気分でした。そのウインドウは、私が高校の時からおそらく手つかずのままで、膨大な時間を過ごして今では”化石”になっていました。

 その埃を被ったウインドウ見て、私たち二人は顔を見合わせて小さく笑ってしまいました。折しも昨晩テレビのバナナマンの日村さんの「ヒムさんぽ」という番組で同じような光景を目にしたからでした。でもすぐに気を取り直して、たとえウインドウが化石であってもコーヒーの味とは何の関係もないのだと思おうとしました。店内の雰囲気ははまずまずで、普通の喫茶店だし、ちらほらお客さんも入っています。メニューを見ながら、何にしようかと考えて居たらピザが食べたくなりました。「ピザとカフェラテ2つ」を店員さんに頼んだらその人はとても困ったような顔をしました。どうやらピザはできないようなので、ミックスサンドを注文しました。

 その後カフェラテとサンドイッチが運ばれてきました。ミックスサンドはキュウリとハムが今まで見たことが無いくらいの薄さというか、想像を絶する代物だったので内心で凄いと思いました。一口食べて見るとパンとマヨネーズの味しかしませんでした。ミチコさんも私と同様な感想だったので、それ以上は口にするのはやめて持ち帰ることにしました。ミチコさんがバッグに持っていたビニール袋にそっと詰めると私たちは早々に退散しました。あの店のコーヒーの味ですか?それはご想像に任せますが、サンドイッチと同程度のレベルだということは確かでした。

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