人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

音は上層階に響く

離れているのに、なぜかすぐ側だと感じる

 今朝、散歩をしていて、いつものように折り返し地点にある橋の真ん前で引き返そうとした。その瞬間、電車のゴオ~ッという通過音がして初めて、線路があることに気が付いた。深い緑に囲まれている場所で、高架下は川が流れている。そのため気にも留めなかったが、見上げるとタワマンが川を挟んで2棟建っている。その時、ふと思った。こんな線路沿いで、ひっきりなしに電車が通るような環境で、果たして煩くないのだろうか、と。まあ、顔も名前も知らない見知らぬ人住んでいるのいるのだから、当方には関係のない話なのだが、それでも気になった。

 なぜかと言うと、私の同僚に15階建てのマンションの14階の部屋に住んでいる人がいるからだ。その部屋は周りは閑静な住宅街で住むのにはまたとない環境なのだが、ひとつだけ問題があった。近くに小学校、中学校、高校などが多くある文教地区でもあったので、学校からの騒音が物凄かった。そんなことを聞かされても、皆全くピ~ンと来なかった。そんな高層階に住んでいる人は彼女しかいなかったから、経験したことが無いのだから無理もない。特に耐え難いのは、運動会の練習で先生が拡声器を使って生徒に指示を出すときの騒音だ。あれを聞くと、頭がガンガンしてどうにかなりそうだった。躊躇することなく、学校に電話してやめてもらうように頼んだ。

 皆彼女のそんな話を聞いて仰天した。それぐらいのことで、そこまでするの?というのが本音だった。すぐに最近は運動会の時に流れる音楽が煩いだのなんだのと文句を言う輩がいるとの噂を思い出した。おかげで、運動会は静かに滞りなく進行するが、その代わりに今一つ盛り上がりに欠けたものにならざるを得ない。もしかして、彼女はそんなクレイマーのひとりだったの?との考えが頭をよぎったが、慌てて打ち消した。だが、身をもって体験しなければ、到底彼女の気持ちは分からない。気の毒に、彼女は自分がどんなひどい目に合っているかわかってもらえず、同情されることもなかった。よく聞いてみると、学校は近くと言ってもマンションのすぐ側にあるわけでもなかった。だから余計に理解してもらえず、それくらいはしようがないんじゃないのと皆思っていた。どうやら実際にそこで生活している人でなければ、知る由もない、あるいは知らなくてもいいことなのだ。

 彼女の本当に言いたかったことは、地上で生まれる音は皆が想像する以上に上層階に響くということだ。当時はそれがわからなかったが、今なら彼女の気持ちが理解できる。以前、知人が市営住宅に引越した話を書いた。ある日の午後、その知人の住む団地の7階の部屋に遊びに行った。お茶を飲みながら談笑していたら、近くで草野球でもして居るのだろう、檄を飛ばす男性の声が聞えて来た。団地の敷地でやっているのかとお思って、窓の外を見たが、そうではなかった。ベランダに出てようやくわかった。遥か向こうに見える市の野球場の音が7階の知人の部屋まで、ダイレクトに届いていたのだ。

 それで、地上で生み出される音は上に行けば行くほど響くものらしいと言うことに気づいた。7階でもあたかもすぐ側のように感じられるのだから、15階はどんなことになるのか。想像するだけでも恐ろしい。窓を閉めても耐えられないほどの騒音。学校に苦情を言わずにはいられない人も居るのだと改めて気づかされた。

 冒頭のタワマンの話に戻ると、一体何階まであるのかと階数を数えてみたことがあった。その結果は40階で、さぞかし眺めがよくて最高だろうだなんて、すこし羨ましくもなった。しかし、すぐ下を見れば、電車が朝早くから夜中の1時頃までひっきりなしに走っている。防音対策は大丈夫なのか、その点において問題が起こらないのか、他人事ながら気にせずにはいられない。

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