人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

スタンダール・シンドローム

原因は長時間の見上げる姿勢?

 昨日、フランス語の勉強をしていたら、「スタンダール・シンドローム」という言葉が出て来て、一瞬、首を傾げてしまった。今勉強の参考にしているのはNHKのまいにちフランス語の去年のテキストだが、そこに突然、スタンダール・シンドロームという今まで聞いたことがない単語が出現し、大いに困惑した。テキストによると、スタンダール・シンドロームとは、旅行者シンドロームともいわれるそうで、「同じ場所に沢山の記念建造物や有名な美術作品が密集してあるせいで、起こる身体の不調を感じる旅行者がいます」と説明されている。このテキストは、大塚陽子先生の「まどかのフランス街歩き」というタイトルで、博士論文の準備のためにまどかがフランス各地に旅をするというとても楽しい内容になっている。

 以前、パリを起点として、フランス各地を巡り、またパリに戻ってくるという3週間の旅をしたことがあるが、とても楽しかったのを今でも覚えている。今、まどかはブルゴーニュ地方のディジョンという街にいて、ガイドブックによると、そこはエスカルゴとワインで有名だという。まどかは行く先々の街の様子をブログに書いていて、そのブログが毎回テキストに載っているので、ブログを読んでいると、まるで自分がそこに居るかのように錯覚してしまう。自分の部屋に居ながら、まるで、ドラえもんのどこでもドアのごとく、まだ行ったことのない未知の街に旅している気分に浸っている。もちろん、ガイドブックの地図を見ながら。

 さて、まどかは現在ディジョンにいるのだが、そこは「100の鐘楼の街と呼ばれていて、それほど教会の数が多いのです」とブログに書いている。ふ~ん、そうなのか、こんな貴重な情報はガイドブックにはどこにも書いてやしない。やはり、実際に現地に行った人でなければ知りようもないというのは本当なのだ。

 先のスタンダール・シンドロームの話に戻ると、まどかも例外ではなく、「それはおそらく今日私が見学を続けている時に少し感じたことです」と正直に綴っている。そもそも、なぜスタンダール・シンドロームという名前が付いたのかと言うと、『赤と黒』という有名な小説の作者であるスタンダールがイタリアに旅した時のことが発端だった。「フィレンツェのサンタ・クローチェ聖堂の内部のジオットのフレスコ画を見上げていた時に突然眩暈と動揺に襲われ、しばらく呆然としてしまった」とネットの記事には書いてあった。

 最初、私は勘違いをしていて、たくさんの記念構造物や有名な美術作品が密集してある場所がなぜ問題になるのか、全く訳がわからなかった。だが、すぐに大塚先生の「フィレンツェのような観光都市を訪れる観光客は長い間、見上げる姿勢を取ります。その姿勢が影響するのか、見学中に具合が悪くなることがあるようです」との的を得た説明のおかげで納得した。要するに、あの首を後ろにそらす姿勢が原因らしい。考えてみると、旅行者はとんでもなく長時間見上げる姿勢を取らざるを得ない。私などは、首が痛くなるほど天井にあるため息の出るようなレリーフフレスコ画に見とれていた。目の前に、いや、頭の上に人を惹きつけずにはおかない美しいものがあるのだから、首が痛いだなんて言っている場合ではなかった。

 それでも、ブログの中でまどかが感じたような不調は全く私には起こらなかった。これはいったいどうしたことだろう。ただ、人並みに歩き疲れただけのことで、不思議で仕方がなかった。そうなると、何でも検索したくなるのが癖になっている私は、スタンダール症候群のことを調べてみた。すると、まだ不調のメカニズムは解明されてはいないが、どうやら首を長時間圧迫すると、血流が悪くなり、血栓ができやすくなるとの記述を発見した。そして、予防のためには、長時間見上げる姿勢を取らないことが肝要だということだ。

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