人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

カードで占う

中日新聞に連載されている柘植文さんのマンガ『喫茶アネモネ

カードも普通のカードじゃない、まさかの・・・

 実を言うと、最近の『喫茶アネモネ』はなんとなく物足りないと言うか、ネタが微妙過ぎて面白くないなあと思っていた。そもそも、このマンガは世間の人が問題にもしない、どうでもいいことに焦点を当てていて、そこにある紛れもない真実にクスッと笑わせてくれていた。なのに、わがままで気まぐれな私は、今ではそれにも少し飽きていた。だが、先日の金曜日の『アネモネ』には驚かされた。何にかと言うと、作者の柘植文さんの斬新すぎる発想力が素晴らしく、へえ~こんなこと、いったいどうして考えつけるものなのだろうかと感心してしまった。

 私が暫し呆然としたストーリーは、常連さんの青年がアネモネにやってくるところから始まる。ところがその青年はいつもと違って、元気がないので、バイトのよっちゃんんが「どうしたの?」と心配する。すると、彼は「酒屋のミーコちゃんとの仲が進展しなくて・・・」と悩みを打ち明けた。それで、よっちゃんが「じゃあ、マリコママに占ってもらえばいいわよ」と青年を励ますのだが、このマリコママは占い師でも何でもない、ただのスナックのママである。彼女の占いがよく当たるとかいう噂は聞いたことがないが、いや、少なくとも漫画ではその真相は明かされないが、よっちゃんが勧めてくれるので青年は占ってもらうことにする。

 普通は占いと言うと、たいていはタロットカードだと誰もが思うが、マリコママは違った。カードをシャッフルして、「これだ!」と取り出したのは、なんとクリーニング屋の会員カード、こちら読者は「ええ~、何それ~?」で、全く意味が分からなかった。それで、言うことがいい、「二人の仲はまだ真っ白ってことだ」だなんて、そんな見解有りなのだろうか。要するに、クリーニング屋と言えば、汚れた衣類を綺麗にしてくれるところで、ワイシャツなども嘘のように真っ白になる、そんな発想から二人の仲はまだ何も始まっていないというわけだ。正直言って、この発想には少し呆れたが。

 次にマリコママが取り出したカードは、なんと内科のクリニックのカードだった。なんのこっちゃ?とこちらは思ったが、信じられないことに、「ここは待ち時間が長いから、ただ待つしかない」というのだった。待つしかないということはどういうことなのか、それとも、待っていればいつかは青年の願いが叶って無事二人は結ばれるのかと思ったら、とんでもないどんでん返しが待っていた。三枚目のカードはマリコママが店の常連さんの誕生日に渡すカードで、ハートマークがついているなんだかいい感じのカードだったが、これが意味するものがこちらの想像を遥かに超えていた。

 要するに、「100%無感情」ということで、青年にとっては何とも悲しい未来だった。いくら待っても、この先酒屋のミーコちゃんとの間に恋愛感情が生まれることはあり得ないのだった。青年は「海が見たい」と言ってアネモネから出て行ってしまったが、よく考えてみると、マリコママの占いはどう見ても信じがたい。単なるあてずっぽで、適当なことをあれこれ言っているだけなのだが、辻褄が合っていて、その発想力になるほどと一瞬感心してしまうところがおかしくもある。

 カードで占うというと、すぐに頭に思い浮かぶのはタロットカードだが、考えてみれば、カードと名のつくものは世の中に五万とある。クレジットカード、病院の診察券、量販店やファストフード店のポイントカード、美容院やジムの会員カード等々、それぞれが意味を持ち、また思い入れがあったり、無かったりと様々な感情が交錯するアイテムだ。青年の恋愛の行方を占うにはそんなカードたちは向かないかもしれないが、暇つぶしにはもってこいではないのか、とチラッと思ってしまう私である。

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