人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

3カ月も借りていた本を返した訳

予約すれば、自分で探さなくてもいいから

 先日3カ月もの間借りていた本をようやく図書館に返しに行った。その本は高樹のぶ子さんの『伊勢物語 業平』で以前日経の夕刊に連載されていた小説だ。当時は気が向けば読んだり、読まなかったり、のなんとも不真面目な読者だった。ただ、新聞小説の良さは本の分量としてはだいたいが2ページくらいのもので、すぐに読めてしまうのが最大の利点だ。新聞を開いて、別の記事に目を通していても、少しでも気になれば「今日はひとつ小説でも読んで見ようか」という気になる。そうやって読んでみると、なんだか面白そうとなって味を占め、また次の日も読むことになる。ただ、その時にあまり自分の好みでないと、それ以降は完全に見放すことになる。そうなると、「この小説はあまり面白くないから、早く終わって次のが始まればいいのに」だなんて、勝手なことを言い始めるのだが、だいたいが連載期間は1年と決まっているからどうしようもない。

 新聞に連載中の小説を読む効用は未知の作家に出会えることに尽きると思う。普段の自分なら絶対読まない、手に取ってみる事すらしないであろう作家の小説を試し読みできることだと思う。その点において、この『伊勢物語 業平』も私にとっては未知の存在で、主人公が名うてのプレイボーイの在原業平だから面白くないはずがないと思い込んだ。それでも気まぐれな性格が禍してか、たまに読んだり読まなかったりを繰り返し、気が向けば切り取ってスクラップしていた。さて、連載が終わってみると、なぜか初めからもう一度読み返したくなった。スクラップして置いたのはほんのわずかで、今更後悔しても後の祭りだ。それからなのだ、私が新聞小説のスクラップを始めたのは。とりあえず、何でもかんでも連載されている小説はすべて切り取って保管しておく。

 そうすれば、後から、それまで読んだ小説の残像がふと追いかけてきても、溜め込んで来た新聞小説の束からいくらでも探せるのだから。正直面倒だと思うこともあるが、スクラップを習慣にしてしまえばいい。それはさておき、『伊勢物語 業平』は滅多に行かない図書館の棚を散策中に偶然見つけた本だった。目を皿のようにして数多くの棚を探し回っても、気に入った本がどうしても見つからず、疲れ果てていた。そんなときこの本を見つけて、砂漠にオアシスを見つけた気分になった。

 もちろん、すぐに読み始めたが、読み進めるうちに良からぬことを考え始めた。それはどうせなら『伊勢物語 業平』の感想文をブログに書こうと欲を出したのだ。それが1月の中旬のことで、明治大学教授の斉藤孝先生の感想文の書き方のアドバイスに従って、印象に残った文章をノートに書いて、それに対する感想も付け加えた。小説を読み終えたとき、ノートにはそれなりにブログのネタが溜まっていたのにも関わらず、肝心のブログを書く気持ちが高まらない。要するに、まだその時ではないと、ズルズルと先延ばしになっていて、貸出し期間の延長を繰り返していたから、気が付いたら、4月になっていた。

 どうして、たった一冊の本を3カ月も借り続けていたかというと、また書棚から本を捜し出すのが面倒だったからに過ぎない。つまり、やっと見つけた本だったからこそ、ブログを書くまでは手元に置いておきたかった、ただそれだけのことだった。それが、新聞のアンケートで「ネット予約」という便利なサービスがあることを知って、たちまち固定観念が覆され、自分で探す必要がないことが分かった。ネットで「予約完了」の手続きをすれば、貸出中でない限り、翌日には「取り置き中」のメールが届くようになっている。実は新刊の小説『影の王』を借りていたが、期間延長をしようとしたら、「予約している方がいます」との表示が出たので、返しに行くついでがあった。それで、『伊勢物語 業平』もとりあえず返すことにした。もちろんその時の私は、またいつでも、好きな時に借りようと思えば、借りられるのだからという自由で、すっきりとした気持ちだった。

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