人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

東北の知人に電話をしてみたら

今週のお題「おうち時間2021」

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NHKまいにちフランス語のテキストのグラビアから。

感染者がいないのに外出自粛の衝撃

 先日久しぶりに東北の知人に電話をしてみました。あちらは感染者がほとんどいない地域なので、さぞかしのんびりと暮らしているのかと思っていました。羨ましいという気持ちも少しはあったのですが、話をしてみたらそんな浮かれた気持ちは一瞬で吹き飛んでしまいました。知人の話では、この1年の間、ずうっと「外出自粛」が続いていて、もう我慢の限界だそうです。嘆きとも怒りとも区別がつかない気持ちでいっぱいなのですが、どうにもならないのがもどかしいのです。感染者がほとんどいないのにどうしてと疑問に思いますが、いないからこそピリピリしているのです。思えば去年この地域はコロナの感染者がゼロだったのですが、年の暮れが近づくと一人見つかってしまいました。周りから「絶対行くな」と口を酸っぱくするほど言われていたのに他県に遊びに行ったからだそうです。

 それにしても他県から来る人はお断りなのは納得できるのですが、なぜ自分たちにも厳しい規則を課すのか。「用事がなければ出歩くな」と隣近所で監視しあって、それを破ろうものなら非難の目に晒されてしまうのです。まるで自分で自分の首を絞めているようだと知人は言います。コロナが流行以前は普通にしていた親戚同士や近所との付き合いも制限されてしまいました。気軽に他人の家に上がり込んでお茶を飲むことさえできなくなりました。どうしても用事があるときは玄関先で立ち話をして終わらせているのです。田舎において人との交流がなくなったら、これはもう死を意味すると言っても過言ではありません。特に高齢者にとっては大問題です。それでもまだ田舎には田んぼや畑があって、広い庭がある家が多いので、閉じ込められていると言った閉そく感がないのが救いと言えます。

 感染者が少ない地域はもっと人々は緩い考え方をしていると聞いていたのに、知人の地域は全く違いました。でもそれはその地域のしきたりや住民の気質に大いに関係していると思うのです。以前知人の家を訪ねたことがあるのですが、その時の客人に対する対応は私の知っているものとはあきらかに違っていたのです。私が育った家では、お客さんが来たらもてなすのが当たり前で、楽しんで帰って貰うのが普通でした。それなのに、彼らは客を放っておいて積極的に関わろうとはしないのです。知人に言わせると、その地域では「お客をかまわない」のが普通なのだそうです。つまりサービスという言葉自体なくて、各自勝手に楽しめばいいという考え方でした。「人のことなど知らない」と干渉しない個人主義に徹しているのですが、決して悪気があるわけではないのです。彼らはそのやり方が正しいと信じているのですから。

 でも、もし初めての家に招かれて、「さあ、どうぞ食べて」と言われて、みんながどんどん食べ始める中で、自分だけが取り残されているように感じてしまったら、そんな時はどうしたらいいのでしょう。普通はその家の人が気を利かせて、テーブルに並べられている大皿から小皿に料理を取り分けてくれます。あるいは「何がいいですか」と聞いてくれるものなのですが、それもないとしたら、自分で取るか取ってくれるようにお願いするしかないのです。変な話ですが、遠慮していては食べたいものも食べられない。そんな状況に遭遇することになるのが、「かまわない」地域の日常です。私も最初は「とんでもない所にきてしまった」と戸惑いを隠せませんでしたが、郷に入っては郷に従えと諦めました。箸を持ったまま、どうしていいかわからなくて呆然としてしまった自分の姿を思い出すと今でも笑いが止まりません。

 以前テレビで「田舎に泊まろう」という番組がやっていました。各地を旅して、偶然知り合ったその地域に住む人たちの家に泊めてもらう企画でした。あの番組を見ると、日本でもその土地柄によって、人情に温度差があるのを感じずにはいられませんでした。ある時、番組を見ていたら、偶然にも知人の住んでいる県で泊る家を見つけようとしていたのです。ところが、お願いしてもお断りの連続で、結局はどこにも泊めてもらえませんでした。理由を聞いてみたら、テレビ番組とはいえ、芸能人をましてや赤の他人を家に入れることはできないのでした。「いつも見ているから来てくれて嬉しい」などと言う浮かれた親近感は微塵もないのでした。毎週結構楽しく見ていたのですが、たいていどこの地域も最後には泊る家が見つかるものなのです。でも唯一の例外が知人の住んでいる県でした。この時のことを思いだすと、たとえ感染者がいなくても、「外出自粛」というのも十分あり得ると実感した次第です。

mikonacolon