人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

キャリーケースを買った

本当は荷物は最小がいい、だがそれだと、ひもじくて

 先日、やっとキャリーケースを買った。本当のところは、買いたくなかったのだが、あれこれ想像すると、やはり、それなりの荷物は必要との決断に至った。誤解を招くといけないので言っておくが、私はバックパックひとつで海外旅行をしたいと常々思っている。できる事なら、”郷に入らば郷に従え”で現地の食べ物を食べて済ませ、それで何とかなったらいいかなあと思っていた。だが、悲しいことに、お米を食べて毎日生きている私は、パン食というものに慣れることができない。最初は外国のパンに感激し、「美味しい」と感激していたが、何のことはない、次第にパンを食べる度に、まるで砂を噛んでいるような感覚に陥った。要するに、パンはもはや食べ物でなくなって、”パンの顔”を見るのに嫌気がさした。

 ショーケースに並べてある、ひとつ9ユーロ以上するフランスパンのサンドイッチ、実に美味しそうで、見かけの良さに釣られて買ったら、その正体を知ってがっかりした。パンにただ野菜とハムとチーズを挟んだけで、パンそのものには何も塗られてやしない。そのデリカシーのなさに愕然とした。外国ではだいたいが主要駅の中にスーパーがあるし、何かしら食べ物が売られている。でも、以前、ウィーン中央駅では、甘いケーキのようなものしか売っていなくて、現地に着いたばかりの私は夜の食事に困った。仕方がないので、ホテルに戻り、日本から持ってきたお米を炊き、レトルトのカレーマルシェをかけて食べた。すると、何のことはない”とっさの食事”が”こんな美味しいご飯は食べたことがない”といった最高のご馳走に変わった。

 異国の空気の中では、炊き立てご飯はまさに宝物で、日本ではたいして美味しいと思ったことがないレトルトカレーも絶品だと思えてくるから、不思議でしかない。外国で食べて、こんなにおいしいものが世の中に有るのかと感激したものの一つに、ワカメスープがある。日本では食べる気すらおこらない代物だが、外国だと、その存在感は半端ない。すごく美味しいのだ。一度、日本で試してみたことがあるが、ただの塩辛いスープに過ぎなかった。それなのに、外国ではなぜあんなに美味しく感じるのだろうか。

 考えてみると、ヒースロー空港での航空機爆破未遂事件で、液体の機内持ち込みが禁止されて以来、異国でレトルトカレーも、炊き込みご飯も食べたことはなかった。要するに、ロストバゲージも嫌だし、到着時の荷物受け取りが面倒だからと、荷物を預けるのを避けていた。それでも、炊飯器とお米やふりかけ等は持って行ったので、それなりに自炊はしていたが、実はごはんのおかずに困っていた。それに、炊くお米が無くなって、あまり好きではないが、数日マクドナルドのハンバーガーで過ごしたこともあった。近くに適当なレストランでもあれば、そこに通ってもよかったのだが、現実にはないのだからどうしようもない。実にひもじい生活を強いられていた。街角の屋台で売られていた、どう見ても日本の”ヤキソバ”に感激し、買って食べてみたら、絶句した。こんな味では食べられない。辛くもない、甘くもない、箸にも棒にも掛からない、ぼやけた味に思わず、これでは材料がもったいない、とさえ思った。

 できる事なら、もうあんな思いはしたくない、となると、機内持ち込み手荷物だけでは不十分だった。荷物が少なくて身軽だが、食べ物に困る旅行と、それなりに荷物が増えるが食べ物が十分にある旅行の、二つのうちのどちらを選ぶかを自問した。ずうっと考えていたが、答えはすぐには出なかった。でも、出発日があと2カ月になった現在では自ずと決まった、新しくキャリーケースを買って、荷物を預けようと。日本に居たらたかがレトルト食品だが、ひとたび異国に降り立てば、たちまちそれはご馳走に生まれ変わるのだから。

 さて、これ以上ないくらい悩みに悩んだあげくの果てにキャリーケースを買った。ネットで注文したのだが、その決め手になったのは、キャスターの静音性で、口コミでも確認済みだった。昨日商品が届いて、試してみたら、とても静かでいい感じだ。今持っているキャリーは、ガラガラと煩く音を立てるし、以前人込みで右往左往して冷や汗をかいたことがあった。早速粗大ごみに出すことにした。

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