人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

いつまで若作り?

美しさを維持するのも楽じゃない

 女性なら、誰しも、いや男性であっても、いつまでも若くありたいと思うのは当然のことだ。心の若さはともかく、とりあえず外見をどうにかしたいと思う。だが、それには相当な努力と投資が必要で、常に人目を気にしている自分に嫌気がさすのではないだろうか。あの人、年の割には若い、と言われてみたい、あるいは、言われないまでもそう思われたいと思ってみても、現実は上手く行かない。若作りの基本はまずは髪の毛で、女性なら定期的に美容院で染めてもらうのだが、知人は自分で上手に染めている。それに、彼女の場合、よくありがちな髪の毛の生え際が白くなるという現象が起こったことはまずなかった。それくらい白髪染めの管理が徹底していた。普通の人なら、髪の毛だけでも、自分で何とかして、顔の方は化粧で誤魔化すしかないのだろう。

 私はいつも思うのだが、元々綺麗な人は、年とっても、やはり綺麗をキープしたいのではないだろうか。美に対する執着が凄いのではないかとかいろいろ想像してみるのだが、自分の身の回りにそんな人はいないので、実際は分からない。特に顔は目鼻立ちとか、持って生まれたものがものを言うから、美しい人は年とっても美しいのだと思っていた。いや、そう思いたかった。

 だが、先日の日経新聞の夕刊に連載されている岸本葉子さんのエッセイを読んで、美しさを維持するための、陰の努力にため息が出た。誰もが認めるように、岸本さんは若い頃から美しい人だったし、芸能人ではないかもしれないが、俳句番組の司会をしていたこともある。当然、見かけを気にする必要があるのだが、「美人はいつまでたっても美人」で何も特別なことはしなくてもいいのだとばかり思っていた。以前の記事で、プチ整形をしていることは知っていた。プチ整形とは普通の整形のイメージとは、一線を画していて、費用も安く、気軽に受けられる施術だと言う。例えば、顔にできた小さなシミがどうしても気になって、化粧でも隠せないとなったら、躊躇せずプチ整形をするのだそうだ。

 岸本さんは、半年に一回は眼の下のクマを消すためにコラーゲン注射をしていた。「加齢で皮膚の下が萎んで、凹みが影となるのを、コラーゲン注射によって埋めるだ」と言う。最初はどれくらいの頻度ですればいいのかわからなかったが、後でそんな杞憂は無用だと気付いた。だんだんと時間が経つにつれて、目のクマがくっきりと浮き出してきたからだ。その時期がちょうど半年後だと言うから、とても分かりやすい。また、美容院にも髪の毛を染めに、こちらは3カ月に一回通っている。それで、最近は予約しながら「いつまで続ける?」と思ってしまうのだ。岸本さんは還暦を過ぎたばかりだが、十分に美しい人で、その人が、今、”年齢相応への切り替え時”のことを考えていた。もしかしたら、その美しさはコラーゲン注射の賜物かもしれないが、それでもイメージが崩れることは決してない。今までのエッセイを読む限り、岸本さんは完璧主義者であり、相当の仕事人間だとお見受けする。そんな人が、きっぱりコラーゲン注射をやめられるだろうかと疑問に思う。それに今の60代は、身体は若い頃と比べたら、雲泥の差はあるとはいえ、まだまだ若い。

 岸本さんが注目しているのは最近シニア向けの雑誌に登場する80代の女優さんのグレーヘアーだ。最近は「身体にも髪にも有害な白髪染めをやめました」と宣言して、堂々としているシニアが多い。白髪のままなので、アクセントに唇に赤い口紅を塗っている人もいる。その際、どう考えても、目立つのは、大きな目とか整った顔立ちで、そのせいで、グレーヘアーがカッコよく見える。普通の人がやったらどうかと思うが、普通の人は身の丈に合ったスタイルをするしかない。執拗に美を追求するのでない限り、もう美しさを追い求めるのはやめにして、年相応にしようと、自然と思えるのではないだろうか。だが、一方では、その行為は、”女を捨てる”と言うことにならないだろうか。やはり、誰かのためではないだろうが、”女性はいつまでも美しくあるべき”みたいステレオタイプな考えがどこかにあるのではないか。

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