人生は旅

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感染の格差とペスト

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貧富の差が感染の格差を産んで

 コロナウイルスの感染拡大でアルベール・カミュの小説「ペスト」(新潮文庫)がミリオンセラーを記録したそうです。一方、今日の朝日新聞天声人語では「ロビンソン・クルーソー」作者デフォーが書いた「ペスト」を取り上げていました。ロンドンを舞台にした実録風の小説で、貧富の差が感染の有無に多大な影響を及ぼしていることがわかるそうです。この小説によると、お金持ちはロンドンを脱出するか、あるいは食料を買い込んで自宅に引きこもった。だが、庶民は食べていくために仕事に行かざるを得ないので、街中を歩き回って感染してしまうのだと。

 そして、このような状況は現代の日本にも当てはまり、昨日の投書欄にも非正規社員の女性の悲痛な声が寄せられました。自分の会社にはテレワークも時差出勤もSTAY HOMEも関係なく何の配慮もありません。だから政府は自分たちのような立場の人から先に補償をして欲しいと訴えているのです。ヨーロッパの国、特にドイツでは申請してからわずか2日で166万円が振り込まれたそうですから夢みたいな話です。まず役所の窓口に並ぶところから始めなければならない日本では、貰えたとしても膨大な待ち時間を耐えなくてはなりません。それまでに生活が立ち行かなくなる人も大勢いるのではないでしょうか。ホームレスの人々にとって不可欠な炊き出しも中止になったと聞きます。これからどうなるかわからない今の状況では、”明日は我が身”でとても他人事とは思えません。

 感染者数世界第一位のアメリカでも、ニューヨークでは黒人やヒスパニックの人達の死亡率が高く、他の州でも同じような状況だそうです。黒人が多数住んでいる州では感染率が3倍、死亡率が6倍になるといいます。その原因は社会的格差で、十分な医療が受けられず、都市の中心部に住んでいることが多いため人との接触が避けられないことがあげられます。

 ペストが社会に自由を与えた

 「ペスト」と聞くと、やはり「恐ろしい伝染病」と言う固定観念がありました。しかし、朝日新聞の記事では、別の側面から見てみると目から鱗の事実が浮かび上がるのです。14世紀に感染拡大を起こし、黒死病と呼ばれたペストは歴史の教科書に載っている様々な出来事のきっかけになっているのです。例えばルネサンスで、神を絶対だと疑いもしなかったのに、たくさんの人が死ぬのに神は助けてくれません。もしかしたら神なんていないかもと思ったら自由に生きればいいと開き直った、それまでの価値観がひっくり返ったのです。感染症が社会に自由を与えたなんて、いかに特権階級だけがいい思いをして、ほとんどの人は抑圧されていたかが分かります。

 さらに興味深いのは、ゴルフは羊飼いが仕事の合間に始めた遊びから生まれたという説です。ペストによって人口が大きく減少し土地が余ったため、イギリスでは農地を牧羊地にして効率のよい経営を目指しました。その結果毛織物工業が発展し、土地が広大なため牧羊犬を使うことにしたら、羊飼いの仕事が楽になりました。暇になった羊飼いは時間をもてあましたので、自然と面白そうなことを考え出したのかもしれません。

 また意外なことに特にペストが深刻だったイギリスで資本主義が発展しました。歴史から見るとペストの流行は、それまでの古い考え方から近代の新しい思考への転換を容易にしたとも言えるのです。

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