人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

なぜあの人の本棚は綺麗なのか

今週のお題「本棚の中身」

自分とは雲泥の差、どうしてこんなことに

 アートディレクターの佐藤可士和さんは、小学生の頃友達の家に遊びに行った時、物凄い衝撃を受けてしまった。なぜかと言うと、その子の部屋の本棚があまりにも綺麗と言うか、整理整頓されていたので、自分のと違い過ぎたからだった。本がちゃんとジャンルごとに分けられていたし、サイズごとに整然と並べられていた。「自分と同じ年なのに、この違いは何なのだろう?」と天と地がひっくり返るぐらいの驚きだった。その日友達だちの家から帰った佐藤さんは、すぐに自分の部屋の本棚の整理整頓を始めた。「あの時、初めて”整理整頓”することはなんて美しいことなんだろうと感じた」と新聞のインタビューで話していた。そして、あの時の体験が自分のデザインの原点となっていると強調していた。

 私も以前”美しすぎる本棚”を見て仰天したことがある。ただ、佐藤さんと違うのは、それを見たからと言って何もしなかったということだ。あんなの無理、無理とまさか真似をしようなんてことは露ほども思わなかった。あんな、捕って付けたようなモデルルームにある本棚なんて実現不可能だと鼻から諦めていたからだ。どう考えても、誰かに見られるのを前提としているような、どこに出しても可笑しくない、綺麗すぎる本棚なんて現実的ではないと思っていた。

 会社の先輩が家を新築したので、「見に来ない?みんなを招待するわよ」と私たち後輩を誘ってくれた。彼女の家は元々は昔からある広い敷地にあるお屋敷のような家だった。その家がかなり傷んできたので、建て替えようとしたのだが、それよりは思い切ってマンションにしてしまおうと考えた。5階建ての建物で3階は自分たち一家が住むことにし、あとの部屋はすべて売却することにした。マンション名はエカテリーナ・ロイヤルパレスだなんて、なんだか豪勢な名前だなあと皆で笑ってしまった。

 「うちは一応6LDKなの」と先輩が言うので、私たち一同は中はいったいどうなっているのかと興味津々だった。玄関に入ると、そこは小さな部屋一つ分くらいはあろうかと思われる広さがあった。ものすごく贅沢でゆとりのある作りで、壁はすべて収納スペースになっていた。外に物が何も出ていないすっきりとした玄関に私たちは感動した。靴を脱いでスリッパに履き替えて、ドアを開けたら、そこは広々としたリビングルームで太陽の光が燦燦と降り注いでいる快適な空間だった。隣にグランドピアノが置いてあソファに私たちは座って、お茶を飲み、ケーキをご馳走になった。少しの間、おしゃべりをした後、先輩が、「これから部屋を見る?」と尋ねた。

 先輩夫婦のベッドルームや二人の娘さんたちの部屋も見せてもらったが、一番印象に残っているのは下の娘さんの部屋だった。その部屋はおそらく広さは6畳くらいだったと思う。床はフローリングでウオーキングクローゼットになっていた。5段くらいの本棚があって、どの段も本がこれ以上無理だろうと思うくらいギュウギュウに詰め込まれていた。ところがよく見てみると、その本棚が部屋のひとつのインテリアとしての役割を立派に果たしていた。たぶん、几帳面な性格なのだろう、仕事で使う保育関係の本、趣味の歌舞伎鑑賞のための本、その他のジャンルの本等がきちんとまとめられて入れてあった。

 先輩に言わせると、娘さんは本棚の中身と同様に、頑固で何に対しても正論を譲らない性格らしい。自分の祖母に対しても、容赦ないらしく、程々ということを知らないらしい。「あの子の言うことはいつも正しいけど、私には厳しすぎて、時々怖いと思うことがある」などと先輩に愚痴を言っていた。上の娘さんが祖母にとても優しいので、余計に下の娘さんのきつい性格が目に付くようだ。時には、宗教団体のデモに抗議したりして、転んで膝小僧を擦りむいてしまうこともあったらしく、先輩はとても心配していた。

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