人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

扇風機付きのベスト

作業着だけかと思いきや、町中で発見!

 先日いつものように、早朝散歩に出かけた。その帰り道、ふと見ると、横断歩道で信号を待っている男の人がグレーのベストを着ていた。昨今の異常な暑さの最中に好きこのんでベストを着ている人がいることになぜ?どうして?と訝かしく思った。だが、後姿をよく見ると、ベストの両脇に何やら、黒い円いものが付いていた。それにこころなしかベストが膨らんでいるようにも見えた。もしかしたら、これは、今話題になっている扇風機付きの作業着と似たようなものではないか、と鈍い私でも分かった。

 実をいうと、日経の夕刊に連載されている岸本葉子さんのエッセイ『人生後半初めまして』で、扇風機付きの作業着のことを知ったばかりだった。岸本さんは近所の工事現場を通りかかったとき、いつもいる人に「こう暑いと大変ですね」と声を掛けた。すると、「昔よりいいよ。扇風機を着ているから」とファン付き作業着のことを教えてくれたそうだ。作業服の両脇にファンが付いていて、バッテリーで稼働し、中へ風を送り込んでいる。着こんで大変だとばかり思っていたら、実はそうだったのかと納得がいったそうだ。今街中では携帯用扇風機が大流行りだが、どうみても、こちらの仕組みの方が効果的だと思うのだが。ファン付きベストを着ている人は、冒頭にあげた男性しかまだ見かけたことはない。いくらぐらいするのか、あるいはネットで売っているのか、チラッとは思ってはみるが、まだ実行に移すまでには至っていない。

  考えてみると、これまで暑さ対策のグッズはいろいろあったが、岸本さんは首に巻くタオルのようなものを愛用していた。濡らすと冷えるという優れものだったが、あれは服に水が染みて大変なので、やめてしまった。街中で調べてみると、今はチューブを曲げて輪にしたものが人気で、とても軽くて使いやすそうだ。店で「首にすると涼しくなる輪、ありますか」聞くと、それはクールリングと呼ばれていた。『売り場にある商品を試着すると、すでに涼しい。特殊素材が入っていて、28度で凍結、体温によって解け始め、その際に熱を奪うという。長時間は持たないが、外して冷房の効いたところに置けば、再び凍り始めるわけで」と詳しく説明してくれている。

 それではと、酷暑の最中、道行く人を眺めてみると、誰もクーㇽリングと思しきものを首にしている人はいない。早朝にジョギングをしている人でさえ、帽子をかぶるくらいで暑さ対策はほとんどしていないようだ。考えてみると、過去にマスコミで首に巻くタオルが話題になった時も、町中で使っている人を見かけたことなどなかった。なので、私などは皆が使っていなら、たいして効果はないのかもしれない、ぐらいにしか思っていなかった。となると、スーパーで実物を目にしても、いくら能書きが書かれていても、やはり買おうと言う気にはなれなかった。事実、それは皆からそっぽを向かれ、売れ残っていたのだから。それでも、ラベルに書かれている効用を信じて買ってしまう人は、おそらく夢を見たい人なのだろう。幻想とわかっていても買ってしまうのだから。まあ、私も他人のことをとやかく言う資格はないのだが。

 帽子を被るくらいの暑さ対策しかしていない私だが、それでも早朝の散歩をヘロヘロ、ヨロヨロになりながらも続けている。歩き出しは上りが続くので多少辛いが、帰りは下りなので面白いように自分の身体が転がり落ちるように前に進む。そんなある日、歩きだしてすぐの交差点であるものを発見した。横断歩道に何やら白と灰色が混じった物体が横たわっていた。それは横断歩道の真ん中にあってはっきりとは見えないが、おそらく鳩の死骸だろう。私は一瞬渡ろうとして躊躇したが、反対側から若い女の子が、こちらにむかって歩いてくる。息をひそめて見ていると、彼女はもう少しのところで鳩を踏みそうになるが、幸運なことに足元には気づかない。その様子を見ていた私はもう横断歩道を渡る気にはなれなくて、足早にその場から離れて歩き出した。散歩からの帰り、行きとは反対側の道を通りかかると、鳩の羽根が無数に散らばっていた。おそらく鳩の乱闘騒ぎでも未明にあったのだろうか、その結果として、あの鳩の死骸は存在していた。そう考えたら、ストンと腑に落ちた。

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