人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

島村さんの恋の行方

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危険をはらんだ恋の行方は誰にもわからなくて

 目覚まし代わりのNHK第一放送の天気予報によると、今日の天気は午前中は晴れ間が出て、午後には雷雨または雨が降り出すとの予想でした。それなのに、先ほどからもう雨がぽつりぽつりと落ちてきています。こんな雨の日に思いだすのはあの人のことです。あの人とは若い頃勤めていた会社の後輩の島村さんです。彼女はあの頃たしか20歳を過ぎたばかりで、愛くるしい顔をしていて、無邪気でまるで少女のような女性でした。ふだんは天然でみんなの笑いを誘うのに、いざ仕事の時は物凄い集中力を発揮していました。仕事ができるので、当然課長のお気に入りだったので

 そんな非の打ち所がない彼女の口から、ある時こんな言葉が漏れたんです、「うちのお母さんって面白いことを言うんです。お前もタバコを吸ってみるかって勧めるんですよ」。彼女の母親は自分がタバコを吸っているときに、なにげなく娘にタバコを1本差し出したのです。それも彼女がまだ未成年の高校生の時のことだそうで、そのことを聞かされた同僚と私は仰天してしまったのでした。何が普通かはともかく、当時は未成年でタバコを吸うのは不良というレッテルを貼られてしまう行為でした。それで、どうやら彼女の家庭は世間でいう普通ではないらしいのだとわかってきたのです。母親が彼女がまだ小さい頃に父親と離婚したせいで、彼女は母子家庭で育ちました。だから母親もそんなに自由な発言をするのかと思っていたのですが、今考えるとそれは偏見以外の何物でもないのでした。

 そんなある日、更衣室で着替えをしていた時に彼女の唇の異変を目撃してしまいました。唇の端が腫れて薄い紫色の花が咲いていたのです。「その唇、どうしたの?」と何気なく聞いてみると、「台所で棚から鍋を取るときに、誤って鍋を取り損ねて顔にあたってしまったんです」。なるほどそんなこともあるよねとその時は納得したものの、しばらくしてから、今度は目の下にあざを作って会社に来たのです。その時も不注意で転んで顔を打ってしまったと誤魔化していました。でも本当のことを聞いたら、高校生の時から付き合っている彼氏から暴力を受けていたのでした。彼女が何をしたと言うわけでもないのに、相手が嫉妬深くて手つけられません。「そんな相手とは別れたほうがいい」と言うのは簡単ですが、実際は恐ろしくて別れ話を言いだせないのです。

 すべてうまく行っていて、悩みとは無縁だとばかり思っていた彼女の中にこんな綻びが見つかるなんて、私たちは物凄い衝撃を受けてしまいました。今でいう恋人からのDVですが、当時はそんな言葉などまだない時代でした。でも確実に見えないところで、誰にも気づかれないところで事態は静かに進行していたのです。島村さんは誰にも相談できず、かと言って、私たちもどうしたらいいのかわからず無力でしかありませんでした。そんなとき、彼女が同じ部署の営業マンの鹿児島君と一緒にいるところを見かけるようになりました。何やら二人で親密そうに話し込んでいる様子はまるで恋人同士のようでした。不意に社内で二人が一緒にいるのに遭遇してしまった時などは、まるで自分がお邪魔虫にでもなったかのように感じてしまいました。噂が広まると、いつの間にか皆は二人を避けるようになりました。

 島村さんがひどい彼氏と別れて、鹿児島君と恋人同士になることは普通なら歓迎されるべきことでした。ただ、そうなるにはひとつ問題がありました。鹿児島君は社内で評判の営業マンで、弁も立つので、プレゼンも見事にこなしました。人当たりもよく、爽やかでイケメンなので、そういう若くて魅力的な男性にはちゃんとした彼女がいるものなのです。そういう点で彼も例外ではなくて、決まった女性がいながら島村さんとおかしなことになっているわけです。島村さんの直面している悩みに同情したのか、あるいは話を聞いているうちに感情移入してしまったのか、本当のところはわかりません。

 複雑な四角関係はその後どうなったのか、今ではもう知る由もありません。あれから、私は会社を辞めて転職したので二人のその後はわからないのです。私の送別会は雨が降っていて、居酒屋での帰りに二人は相合い傘で歩いていました。その熱っぽく睦まじい姿を見たのが二人を見た最後になりました。

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サラリーマン川柳が面白い

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 川柳はコロナの現実を映し出していて

 昨日の新聞に第一生命保険が募集したサラリーマン川柳コンクールの結果が載っていました。やはり、コロナ禍の世相を反映した作品が上位3位を占めました。第一位に選ばれたのは、30代の男性の「会社へは 来るなと上司 行けと妻」で笑ってはいけないのですが思わずクスリとしてしまいます。なるべくならリモートワークで乗り切りたい会社側と家に居場所がない自分との思惑のずれが悩ましくて、コロナ禍の中でのあるある光景といえます。でも、私は少し違和感を抱いてしまうのです。なぜなら、最近はインターネットのアンケートや新聞の投書などで、「コロナ前より家族の仲がよくなった」とか「家族で過ごす時間ができてうれしい」とか、子供からは「お父さんが家に居てくれて嬉しい」との感想まで聞こえて来たからです。

 こんなにコロナ禍でよかったことばかりを聞かされると、「では今まではじっくりと家族で向き合える時間がなかった」だけなのかと信じられない思いで頭がくらくらしました。でも、この川柳が人々から共感されて、選ばれたことに少しホッとしています。今の時代働いていない奥さんなんていないと思うのですが、突然夫が家で仕事をすることになったとしたら、私なら戸惑ってしまいます。だから、悪いとわかっていてもついついイライラをぶつけてしまうのです。普通なら夫が会社に出かけた後は、自由時間で好きなように過ごせました。でも、近頃は家に居て仕事をするので、鬱陶しくて仕方がないのです。何と言っても毎日お昼ご飯を用意しなければならないのが嫌なのです。

 一方、夫も妻が自分が家で仕事をするのを快く思っていないのをひしひしと感じています。できることなら家に居たくはないのです。しかし、会社からはできるだけ来るなと釘を刺されています。だから、どこか別の場所を見つけるしかないのです。されど、行きつけのカフェに行くのは抵抗があるし、他に行く場所が思い当たりません。前に一度だけ図書館の閲覧室にも行ってみました。アクリル板で仕切ってある空間は最善の場所かと思われたのですが、突然誰かが電卓をものすごい勢いで叩き始めたのです。あの音で一瞬で集中力が失われて、その場所に居ること自体耐えられなくなりました。身体が自然に動いて、パソコンと書類をカバンに詰め込んで図書館から逃げ出しました。最適の避難場所だと思われたのに、あっけなく居場所を奪われてしまいました。さて、どうしたらいいのか、居場所を求めて彷徨う自分はまるで糸が切れた凧のような漂流者のようにも思えてくるのでした。

 ひと昔前には「亭主元気で留守がいい」などとよく言われましたが、今の世の中は「亭主元気で家に居るのがいい」とさえ思えてきます。つまり、留守でいろんな場所に行かれては感染のリスクが高いからです。だから家に居てくれるのが一番安全安心なのです。会社に行くとなれば、どこでウイルスを貰ってくるかわかったものではありません。家族をウイルスから守るためにも、外に行かないことは有効なのです。要するに妻の方も発想の転換をすることが必要なのです。知人によると、コロナが流行って夫の仕事が無くなったときは不安で仕方なくて、同時に夫が家に居るのが邪魔だとしか思えませんでした。でもまた仕事ができるようになると、あの時は通勤しなくて正解だったと確信しました。それ以来、彼女は目の前の事態に一喜一憂することはなくなりました。悪いこと良いことは表裏一体で光が当たるところには必ず影ができるものです。靄に覆われて、先の見通せない世の中にあっては、まずどうにかならずに自分の心の平安を保つのが先決なのです。

 また、彼女は夫を今まで「仕事をするから価値がある人」だと思ってきました。だから、仕事をしない夫は何のとりえもないダメな人間だと思ってしまうこともありました。でも今ではそんな考え方は傲慢でしかないと反省しました。誰にだって抗えない嵐は襲ってくるのだっと悟ったからです。

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降り出した雨と相合い傘

今週のお題「雨の日の過ごし方」

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 相合い傘になったあの人の心の中には同僚がいて

 若い頃、勤めていた会社では毎週のように飲み会をしていました。今思うとそのおかげで楽しく仕事ができていたのです。つまり、同僚との飲み会は仕事をスムーズに運ぶための潤滑油の役目をしていました。そう考えると、新聞の広告で見た新刊本の「雑談のない会社は心が凍り付く職場で、社員はメンタルを病むことに?!」なんて宣伝文句が胸に刺さります。もちろん、飲み会は強制ではなく、有志だけの集まりで気軽に会社の近くの居酒屋に繰り出していました。

 あの日は梅雨の晴れ間で私は傘を持っていませんでした。みんなで会社を出て、近場の店にいざ出かけようとしていたら、突然雨が降り出しました。ありゃ、これは大変だ、どうしようと思っていたら、意外なことに傘を差しだしてくれる人がいました。不思議に思って見たら、いつも会社に来ている得意先の橋本さんでした。橋本さんは20代後半の男性で、この日は特別に飲み会に参加することになったらしいのです。彼は照れ臭そうに笑い、私は雨に濡れずに済んだので感謝の気持ちでいっぱいでした。偶然にも橋本さんと私は相合い傘になってしまったのです。正直言って、カップルでもないのになんだか居心地が悪いと感じていたら、やはり同僚たちが「なかなかお似合いじゃない!」などとからかい始めました。違う、違うのだと強く否定すべきなのですが、橋本さんも私も彼らの言いたい放題に付き合ったのでした。

 実はその時私は橋本さんに意中の人がいることを知っていたのです。彼が来客ブースのソファに座ってお茶を飲んでいる時、何気なく目で追っているのは私の同僚の白井さんでした。私はそれまで橋本さんは仕事の話しかしない人だとばかり思っていました。でもお昼休みに社員たちとのプライベートな会話を偶然聞いてしまったのです。誰かが若くて可愛い女子社員の話をしていて、どう思うかと橋本さんに聞きました。すると、彼は「僕はどっちかというと、いつもお茶を出してくれる女性の方が好みなんです」とはっきりと言ったんです。彼が誰のことを言っているのかはすぐわかりました。私の同僚の白井さんで、小柄で色白の清楚な美人でした。

 残念なことに、白井さんは飲み会には滅多に参加しないので、橋本さんとの接点はあり得ません。それに白井さんには一緒に住んでいる男性がいたのです。その人は白井さんが「この世で最も尊敬出来て、信頼できる人」と自慢する男性でした。白井さんはいつも野暮ったい恰好をしているので、もっとおしゃれをしたほうがいいと忠告したことがありました。値段が高くなくて、手軽に手に入る感じのいい服は、いくらでもあるのに、どうしておじさんが着るような作業服を会社に着て来るのか、到底理解できなかったからです。余計なお世話なのですが、収入もあるのになぜという疑問の気持ちの方が強かったのです。そしたら、彼女は素直にすべて話してくれたのですが、聞いていてその内容に椅子から転げ落ちそうになりました。

 彼女の話によると、同居している男性がある決まった金額で生活することを白井さんに訓練として課しているのです。例えば、ひと月生活できる最低の額を5万円とするなら、彼女は普通なら買えるはずの洋服を買うことはできないのです。どう考えても、光熱費と食費で精一杯です。それなのに、白井さんは「彼が私に与えてくれた一つの試練」と相手の男性を疑うことを知らないのです。同僚たちも私も「そんなのおかしいよ。絶対あなたは騙されてるんだよ」と心配するのですが、意に介さないのです。相手の男性はテレビ局のディレクターで、他にも会社を持っていて、立派な人なのに、自分の愛する?女性には忍耐を強要するなんて、とても信じられません。さらに驚かされるのは、「今日彼は仕事の同僚と映画を見て来るので遅いの」と当然のことだと言わんばかりに発言したことです。相手は自分だけ映画を見て楽しんできて、忍耐一筋の彼女が待つ家に帰って行くのです、その場面を想像したら、「そんなの絶対間違ってる!」と拒否反応が起きてしまいました。

 だから、敢えて白井さんに「なぜ、そんな馬鹿なことを続けているの?」としつこく聞いてみました。すると、彼女は「彼が私は放っておくとお金を使いすぎるからダメなんだって」と悲しそうに言ったのです。あの時あんな彼女のやるせない表情を見せつけられたら、どうしていいかわからず、返す言葉が見つかりませんでした。

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紫陽花の季節に想う淡い恋

今週のお題「雨の日の過ごし方」

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 半世紀以上の前の恋を忘れられない人がいて

 梅雨時期なのに珍しく晴れ間が続いていたと思ったら、今日は朝からしっとりとした雨になりました。雨の日の楽しみは何と言っても紫陽花の花で、多種多様な形と色で魅力的な輝きを放っています。特に雨にすっぽりと濡れた紫陽花はひときわキラキラしているように私には感じられます。

 紫陽花で忘れられないのは、去年の今頃新聞に載っていたある男性の投書です。何気なく読み始めたら、最後にはものすごい衝撃を受けてしまったのです。まるで夢の中の話のようで、さしずめ映画かドラマのなかのエピソードに似た純粋無垢な思いが綴られていたからです。その方は72歳の内科医で毎年この季節になると、紫陽花の鉢植えを買い求めるのが習慣になっています。なぜ、他の花でなくて紫陽花なのか、その理由は四半世紀以上の前の淡い恋が忘れらないからです。普通なら、ほとんどの人は子供だったとか、たわいもない昔のことだと意に介さないのにこの方はこだわって大事にしています。あるいはそれ以降の恋愛が上書きされて、淡い恋の思い出はあとかたもなく削除されてしまうのが世の常です。でもこの男性は高校生の頃の淡い恋を心の中の小箱に大事にしまっていたのです。

 今と違って、「男女が一緒に歩くだけでも噂になる時代」だったそうで、自分から連絡をするのをやめました。自分より3つ下の少女の可愛い笑顔が、今も脳裏を離れません。雨の中、一つの傘で一緒に歩いていたら、道端に紫陽花が咲いていました。その花の青があまりにも鮮やかだったので、彼女が思わず、「綺麗な色ね」と言ったのです。だから、その場面が頭から離れずにフラッシュバックして、何度でも蘇ってくるのです。その時以来、その少女と会うことはありませんでした。それなのに、雨の季節と紫陽花はいつだって彼女を想いだすサインのようなものになりました。「淡い恋」なのに、短い時間なのに、それでも記憶に残る「深くて濃い恋」、そんな恋も確かにあったのです。男性は鉢植えの紫陽花を眺めながら、「あの日の胸のときめきを思い出す」そうです。現在に生きながら、その時だけは時空を超えて、まだ若かった高校生に戻っていきます。「まさか、ありえない!」だなんて思ったら、興ざめなのでそんなことは言いません。むしろ、そんな大切な宝物のような思い出が人生に彩りを与えてくれる、そう思った方が人生は豊かになります。

 正直言って、私などは「なんて純粋な方なのだ!」と感激してしまったのです。事実は小説より奇なりとはよく言われますが、現実にこんな方がいたとはと目から鱗でした。考えてみると、一般的には男性は女性より純粋な生き物と言われています。テレビのお見合い番組を見てみると、男女の違いは明白です。男性は第一印象というか、自分のひらめきを大事にして、最後まで決して妥協しません。意中の人をこの人だと決めたら、他の女性からどんなに猛アタックされても、なびくことはありません。たとえ、意中の人に振り向いてもらえなくても、気持ちを変えることはないのです。人の気持ちだけは努力でどうにかなるものではないと、あの番組を見ていて学びました。人と人とが惹かれ合うのはその人が生まれながらに持っている匂い、というかフェロモンに大きく左右されます。

 一方、自分の意志を貫く男性に対して、女性はというと、情けないほど心は揺れに揺れるのです。信じられないほど、あっけなく第一印象で決めていた男性を諦めてしまいます。というより、自分に話しかけてくれて好意を持ってくれそうな人の方がよさそうだと思ったり、少し話をしてみたら感じがよかったとかの理由で、いとも簡単に相手を変えてしまうのです。だいたい女性に人気のある男性は爽やかで誰とでも話せる人で、その人はもう心に決めた人がいるのです。女性には想うより想われた方が幸せになれるというステレオタイプな発想があるせいか、男性よりは一途になれないのかもしれません。

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雨が降ると困る家

今週のお題「雨の日の過ごし方」

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雨が降ると部屋が使えないのに

 雨が降る日をどう過ごすか、そんなことを考えながら歩いていたら、ふと頭の中に遠い記憶が蘇ってきました。あれはまだ若い頃、すでに結婚して子供もいる友達の家に遊びに行った時のことです。あの日も朝からシトシトと雨が降っていました。一緒に行った友人は仲良しなのでよく来ていたのですが、私は初めての訪問でした。彼女の住まいは何階建てかはもう忘れてしまったのですが、マンションの最上階の角部屋でした。玄関のドアを開けると、段ボールが山積みで入口を半分ほど塞いでいるのに、まずびっくりしてしまいました。呆然としている私をしり目に友達は慣れたもので平気な顔をしています。狭い玄関をなんとか通り抜けて、リビングのソファに腰かけて落ち着いた時、彼女が「押入れが狭くて荷物が入らないのよ」と理由を説明してくれました。

 それから三人で談笑していたのですが、すぐに私はあることが気になってしまったのです。それは私たちがいるリビングの隣は畳の部屋なのですが、部屋の真ん中に新聞紙が敷かれてあり、ブルーのバケツが置いてあるのです。「あのバケツはいったい何なのだろう?」そう思ってしまったら、どうしても視線は隣の部屋に向いてしまいます。話をしていても”心ここにあらず”だったのでしょう。遠慮して聞けない私に彼女は「雨漏りがするからあの部屋は使えないの」と教えてくれたのです。よく見ると、部屋には何も家具が置いてありません。きっと押し入れも使えないので、玄関に段ボールを積んで置くしかないのです。

 彼女の話によると、雨の日には天井に雨が浸み込んできて、雨漏りするので二つあるうちのひと部屋は使えなくなるのです。だから雨の季節は大変な思いをすることになるのですが、今ではもう慣れっこになりました。マンションで雨漏りなんて聞いたことはありませんが、最上階というのはそんなこともあるのかと目から鱗でした。それなら、大家さんに行って直してもらえばいいのではと第三者としては思うのですが、あまり乗り気ではないようです。「そんなことできない」でも「ここから引っ越すつもりもない」というのが彼女の本音なのでした。彼女なりの思惑や事情があるのでしょう、何も知らない私はもうそのことには触れないように話を逸らすしかありませんでした。

 その後、同僚がマンションから公共住宅に引っ越すので、手伝いに行ったことがありました。その時、初めて今までの住まいがどんなに大変だったかを知りました。私も遊びに行ったことがあるそのマンションは、日当たりがよく公園の近くにあって最高の立地だと誰もが思っていました。同僚は最上階に住んでいたのですが、ある日、押し入れの天袋にしまった布団がビショビショに濡れていることに仰天したのです。どうやら壁から雨水が浸み込んできてしまうのですが、そのことを大家さんには黙っていました。その代わり、「こんなところには居られない」と引っ越しを考え始めました。そうしているうちに、幸運にも市営住宅の抽選に当たったのでした。この同僚の話からも分かるように、普通は「すぐに直してほしい」とは素直に言えないのが現実なのだと知りました。

 それにしても、雨が降ったら、家の中でも避難しなければならないのは辛いものがあります。ただでさえ、ジメジメでジトジトして、黴が気になるし、洗濯物も乾かないのでオロオロしてしまうのに。いつだったか、雨が降り続いた時、ついに身体を拭くバスタオルがなくなって、仕方なくTシャツを代わりに使ってしまいました。昔海外のユースホステルに泊って、タオルがビショビショで使い物にならなくなった時の苦肉の策でした。あの時の経験からか、とっさに身体が動いてしまったのです。晴耕雨読を気取って優雅に読書を楽しみたいところですが、現実は長雨に翻弄されてしまうのでした。

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雨の日に筋トレを始めてみた

今週のお題「雨の日の過ごし方」

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 座りすぎが気になって、気分転換に筋トレを

 梅雨時期になると、「雨の日は大嫌い、気分が落ち込んでしまうのよね」と友達は嘆いたものでした。でも、私は頷きながらも心の中では「雨が降っただけなのに、どうしてそうなるの?」と不思議でしかありませんでした。ただ単に外で雨が降っているだけで、自分の中に雨が降っているわけでもないのに、そんなに気にすることなのかと理解できませんでした。さすがに自分の心が雨模様なら、降り続く雨は嫌な雨にちがいありません。雨を気にしない私は、毎日早朝の散歩に出かけるのですが、雨風が激しい時は中止になります。そんなとき、何かできることはないかと考えたら、そうだ、筋トレをしようと思いついたのです。

 いつも散歩だけでは体力の維持ができないと痛感していたので、筋トレを始めるいい機会だと思いました。さて、何をしたらいいのか、何か参考になる本が欲しいので、本当なら都心の大型書店に行きたいのです。広い店内にある書棚から、椅子に座ってじっくりと自分にできそうな筋トレの本を選びたい。でも、今は呑気にふらふら出歩いている場合ではありません。思えば、これまで、鏡に全身を映しても恥ずかしくない身体になりたいと、いろんな筋トレ本を買って取り組もうとしました。でも何事にも飽きっぽい性格が災いして、すべて三日坊主で終わりました。本を買って家に持ち帰って自分の物になった時点で、もうやった気になるのですから始末が悪いのです。でも買って帰って来た日はやる気満々なので、真面目にやってみるのです。ただ、問題なのはその情熱がそう長くは続かないことなのです。

 自粛生活でだらけてしまった身体をなんとかせねばと、以前に買った本が何かないかと本棚を捜索したら、ありました、埃をかぶった筋トレ本が。その本は『1週間で腹を凹ます体幹力トレーニング』で日本代表で活躍した長友選手のトレーナーだった方が書いた本です。昔流行っていた”断捨離”でかなりの本を処分したわけですが、この本だけは捨てる気にならなかったようです。もうずうっと思いだすこともなかったのに、自粛生活と降り続く雨のおかげで再会することができました。この本の長所は各自の目的に合わせて、筋トレの種類を選ぶことができることです。きつい運動は苦手な私のような運動音痴にだって、楽にできる筋トレが載っているので無理しなくてもいいのです。

 雨で外に行けないとき、動画サービスを見たり、読書をしていると、気分転換はどうしても「食べる」とか「飲む」になります。なので、これからはその代わりに筋トレをすることにすればいいのです。初めはなかなかやる気にならなくても、それを習慣にしてしまえば楽になります。痩せるとかそういうことではなくて、「この先、自分の身体は大丈夫なのだろうか?」という強い危機感があるからなのです。座りすぎは身体に悪いことは百も承知なのですが、楽なのでついつい座ってしまう、そんな習慣を何とかしなければなりません。でも、現実にはすぐには難しいのです。だから、日常生活の中で少しでも意識して身体を動かすために、筋トレを取り入れようと思うのです。

 先日近所の本屋に行ったら、新聞の広告で見たことのある『ゼロトレ』という身体のメンテナンスの本を見つけました。手に取ってパラパラと捲ってみたら、床に寝そべってやるトレーニングが多いことに驚きました。これなら誰でもできるのではと思うと同時に、一見こんな楽な方法で効果はあるのだろうかという疑問も感じたのです。『体幹力トレーニング』の中にも寝そべってやる「バックブリッジ」というのがあります。おしりを持ち上げて、太ももの筋肉まで一度に引き締めることができる筋トレです。これを実際にやってみると思ったよりきついです。背中から膝まで一直線になったところでその状態を5~10秒キープしなければならいからです。でも、休み休みできるので、私などにも気軽にできるし、これからも続けていけそうです。

 

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▲何年かぶりに日の目を見た筋トレ本『体感力トレーニング』。

 

 

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▲私でも気軽にできる「バックブリッジ」と「サイドレッグリフト」。

 

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梅雨時期は低温調理に注意

今週のお題「雨の日の過ごし方」

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炊飯器の保温機能で低温調理を楽しむ人がいる

 最近私はスーパーに行くたびにモヤモヤしています。特に野菜売り場のじゃがいもを見るとため息が出ます。なぜこうもお高くなってしまったのか、自分が生きている中で一番値段が高くなってしまったからです。1個49円だなんて一瞬自分の目がどうかしてしまったのではないかと目をパチクリしてしまいました。いつもなら、店内で誰かの嘆きが必ず聞こえて来るのにそんな気配は全くありません。普通ならその辺に放っぽってあったじゃがいもが今となっては貴重品になりました。だからと言って、嘆いてばかりもいられないので、今一番お安い野菜である、キャベツをひたすら千切りします。家のすぐ近くにある八百屋では昨日キャベツが10円で売っていました。

 テレビドラマの『レンアイ漫画家』で吉岡里穂さん演じるあいこさんが「もやしは地球を救う」ともやしを褒めていました。私にとってはそのもやしにあたる存在がキャベツで「我が家を救う」と言いたいのです。でも、さすがに野菜だけ食べていては力が出ません。やはり肉を食べなきゃと思っていたら、先日の新聞に 『自己流レシピ、食中毒に注意』という記事が載っていて、読んでみたら衝撃を受けてしまいました。何にびっくりしたのかというと、炊飯器の保温機能を使って肉を調理していることに違和感を抱いたのです。近頃はネットで”低温調理”のレシピが人気があるそうです。おうち時間が増えて、時間ができたせいかスピード料理ではなくても構わないのです。時短よりもゆっくり、じっくりと時間をかけて美味しいものを作れる調理法が好ましいのです。だから、どこの家にでもあって、身近ですぐに利用できる炊飯器が重宝されるのです。

 以前炊飯器を使った料理が紹介されたこともありましたが、実際やってみると、汁がある料理には向かないのだとわかります。一度、試しにおかゆを作ろうとしてやってみたのですが、グツグツと音がしたと同時にお水があたりに飛び散って大変なことになりました。大失敗に終わったわけですが、だからと言って、なぜ保温機能なのか、そんな大それた発想は思いつきませんでした。それに肉がちゃんと加熱されるのかどうか疑わしいではありませんか。その記事によると、肉がしっとりと柔らかく仕上がるのが人気の秘密のようです。でも、ある程度の温度と時間の管理なしでは殺菌の条件はクリアされないと警告しているのです。はっきり言って、高温多湿になる梅雨の時期はやめておいた方が無難なのです。

 以前は確かに具合が悪くなれば、病院に行けばいいと簡単に考えていました。でもコロナが流行っている現在はそう楽観的に考えてもいられません。先日も交差点で信号を待っていたら、近頃は珍しい立ち話の声が聞こえてきました。その内容は「救急車で行ったのに、病院で受け入れを断られた」とかで、そんな自分事とは俄かには思えなようなことを聞いて、初めて今の状況を理解したのでした。

 今まで「低温調理」という言葉は聞いたことがありませんでしたが、ある新聞の料理コーナーでその類のレシピを見かけたことがあります。「一度試したら、病みつきになる」とタイトルが付いていた料理は鶏の胸肉の料理で、興味津々で切りぬいて保管していました。いざ作ってみようと、よくレシピを読んでみたら、あれっと疑問に思いました。「本当にこのやり方でいいの?」ポリ袋に胸肉と調味料を入れて冷蔵庫で寝かせて置いたものを、お湯の中に入れてグツグツ煮るのではないのです。ただ、一定の時間湯煎するだけで、出来上がりなのでした。元々胸肉は普通に火にかけたら、固くてパサパサでどう頑張ってみても美味しくないのです。だから低温でじっくり調理するという工夫をしているのはわかるのです。でもやはり火を使わない調理法は気持ちが悪くて、食べる気にならず作るのをやめてしまいました。家で自分なりにいろいろ試してみるのは楽しい事には違いありません。でも、その自己流のレシピが本当に安心安全なのかどうか疑ってみることも必要なのだと改めて気づかされました。

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