人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

大型スーツケース

 

▲日経プラスに載っていた、大型スーツケースのランキング。

なかなか良さそう、でも階段でどうするの?

 先日の土曜版日経プラスの『なんでもランキング』は専門家が選ぶ、大型スーツケースのランキングベスト10だった。コロナウイルスの流行も落ちつき、今度の夏休みはぜひ海外へ行こう!と言うことで、使い勝手のいいものを厳選してある。堂々の一位を獲得したのは、なんと日本の製品で、それも埼玉県越谷市にあるシフレというメーカーの独自ブランドで『ゼログラ』だった。写真でわかるように、見た目は大型だが、軽さで人気のシリーズだそうで、第一位に推された理由が、『柔らかい取っ手と、高い静音性』である。『走行音がとにかく静かで、夜間の帰宅や海外の石畳で効果を発揮しそう』との説明がある。最近街で見かけた人が使っていて、音が静かだと感じたスーツケースは車輪が2個セットになっているタイプのもので、従来の物と比べてはるかに使い勝手がよさそうだった。だが、紙面の説明によると、『静音性を重視し一輪仕様にしている』とあるので、私の判断はどうやら間違っているようだ。

 個人的にはキャリーケースを引くあのガラガラという耳障りな音があまり好きではないので、遠目から様子を窺うだけで使ったことがなかった。だが、友だちのリュックより楽でいいよと言う言葉に唆されて,4年前の海外旅行で初めて使ってしまった。なにぶんキャリーケース初心者なので、うまく言うことを聞いてくれず、日本にいる時から周りに迷惑かけっぱなしだった。冷や汗をかき、穴があったら入りたいようなきまづい思いをした。それに何より困ったのは、階段であれをどうするかと言うことで、持ち手だけであの重い荷物を支えて降ろす、あるいは、持ち上げるとかが至難の業だった。せめて、脇に持ち手が追加で付いていれば、状況は著しく好転しただろうと思われるが、機内持ち込みサイズのスーツケースにそんな気の利いたアイテムが付いているわけもなかった。それで、キャリーケースと言うのは、傍目から楽ちんに見えても、実はそうでもないと言うことを自らの体験で学んだ。

 なので、次に姉たちと一緒に行った台湾旅行ではスーツケースではなく、いつものようにリュックサックにした。姉たちのサポートをするために、両手を開けておくためだった。それと自分の荷物を必要最小限にして、自分で背負える重さ以上の物は持って行かないと決めた。旅行に便利な圧縮袋は、結局は荷物を増やし、重くしてしまうのがおちだ。昔、海外旅行を始めたばかりの頃、最初はリュックひとつで快適だったが、そのうち生活に必要なものを買い足すので、自然と荷物が増えて行った。確か、フランスを旅行していて、サラダを作ろうと、レタス、トマト、キュウリなどの野菜を買って、行く先々でそれらの野菜を入れた袋を持ち歩いていた。貧乏旅行なので、いちいちスーパーで10ユーロもするサラダを買うなんてことは到底できなかった。もっともそうしたほうがスマートなのだがお金がもったいなくて、できないのでみっともないのだ。

 みっともないだけで済めばよかったのだが、あるとき、荷物を持つのが嫌になって、正直に言うと、自分の持っている荷物を放り投げてしまいたくなった。何たることか、業を煮やした私は本気で荷物を捨てようとした。だが、一瞬考えてみた、もしそれらを捨てたら、どうなるのかと。すると、よく考えてみなくても、困ることは明かだった。何が言いたいかと言うと、それくらい何らかの荷物を持つというのは負担に感じる、邪魔になると言うことだ。なので、荷物は最小限に留めるのが荷造りの鉄則なのだが、その固い決意を脅かすのが「あったらいいなあ」という余計な誘惑だ。コロナ前の旅行では出発直前まで、試行錯誤し過ぎて右往左往してしまい、我ながら情けなかった。

 スーツケースの話に戻ると、先日私はある場面を目撃した。それは都心に遊びに行った時、交差点で信号を待っている時に起こった。私が立っている道路の反対側にはちょうど地下鉄の出入り口があって、アジア人と思われる女性の3人組がキャリーケースを引いてやってくるのが見えた。どうやら地下鉄に乗るようだった。でも、彼女たちのスーツケースは大型で、か弱い女性が手で持つにはどう見ても重すぎた。さて、どうするのだろうとこちらは興味津々だが、まじまじと眺めるだなんて、そんな行儀の悪いことはできそうもない。信号が青に変わったので、気にすることもなく通りすぎたが、その後聞こえてきたのは、ガタン、ガタン、というけたたましい音だった。どうやら階段を一段づつゆっくりと落とすようにしてスーツケースを移動させているようで、この時とばかりに渾身の力を込めて手で持つという方法はさすがに無理だったのか。

 なにしろ、階段の数も大変なものだが、3人同時にガタン、ガタンと同じ動作をくり返すので、騒音はいつまでも続いた。その時ふと思ったのだが、確か近くにエレベーターがあったはずなので、そんな周りに迷惑な行為をしなくてもよかったのだ。おそらく彼女たちはその事実を知らなかったのだろう。

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