人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

夫婦喧嘩

花野家の夫婦喧嘩の決着はなんとも微笑ましい

 毎朝、中日新聞に連載されている4コマ漫画『ねえ、ぴよちゃん』を読んで、クスッと笑っている。先日の漫画のネタは夫婦喧嘩で、一コマ目はお母さんとお父さんが何やら口喧嘩をしている。二人共相当に頭にきているようだ。その様子をぴよちゃんとお兄ちゃんの椰子彦君が心配そうに物陰で見つめている。二コマ目はお父さんが車を運転して、久しぶりに実家に行こうとしている。実家で寛いで気分転換し、夫婦げんかのことを忘れようとした。だが、当の実家に行ってみると、あろうことか両親は夫婦げんかの真最中で、このままではとばっちりを受けかねない。おそらく、早々に立ち去ったに違いない。お父さんは自分の夫婦喧嘩のほとぼりを覚まそうと実家に行ったはずなのに、自分の両親の夫婦喧嘩を見せつけられた。

 考えてみると、お父さんとお母さんの口喧嘩の原因はおそらく些細な事なのだろう。それでも人は意見が食い違えば、相手に抗議するのは当然の成り行きだ。その時は頭が興奮状態で、一歩譲ろうなどとは決して思わない。だが、冷静になって考えてみると、どうしてあんなことくらいで向きになったのかと、我が身を疑うことも多々ある。

 そう考えると、花野家のお父さんは実に思慮深い人だ。自分の両親の夫婦喧嘩を見せつけられて、「なんてみっともないんだ」と、自分自身を恥じたのだろう。お父さんは家族が大好きなケーキを買って家に帰った。そして、お母さんに「子供の前でケンカするのはやめよう」とケーキを差し出した。これで一件落着、めでたしめでたしである。もちろん、現実はこんなにうまくはいかないだろうが、なんとも理想的な展開についつい引き込まれてしまった。なるほど、まさに”人の振り見て我がふり直せ”ということなのだ。夫婦げんかでカッとなった頭をクールダウンさせるには、絶好の特効薬となったのだ。まずは家から外に出て、ドライブしたのも格好の気分転換となったに違いない。

 夫婦げんかについては、知人からこんな話を聞かされたことがある。ある日の夜、知人の長男の嫁から珍しく電話があった。普段から滅多に連絡してこないのにどうしたのだろうと訝しく思った。その時知人は布団に入ろうとしていたが、仕方がないので電話に出た。すると、いきなり「祥吾さんが、出て行ったきり帰って来ないんです。そちらに行っていませんか」などという。内心、知人は「あなたはいったい何を言っているのですか、あの子は実家に寄りつくような子ではありません。あなたはあの子のことを何も知らないのですね」と言ってやりたかった。

 それでも、そんな気持ちをぐっと抑えて、「うちには来ていませんよ」とだけ答えた。嫁は「ちょっとしたことで、喧嘩をしたんですけど、帰って来なかったらどうしたらいいんでしょう」などと心配で仕方がないと訴えてくる。そうなると、我が子の性格を知り尽くしている知人は自信満々だった。普段から「あの人(嫁のこと)しかいない」と口癖のように言っている息子の言動から考えれば、頭を冷やして冷静になれば、戻って来るのは明かだった。「心配しなくても大丈夫、一時はカッとして怒りに任せて出て行ってしまったけど、だんだんと冷静になるはずだから、そのうち戻って来るわよ」と知人は嫁にアドバイスした。きっと息子夫婦は毎度毎度、こんな諍いを繰り返しながらも夫婦生活を送っていくのだろう。息子の最後の砦は「自分にはもうこの人しかいない」という厳然たる事実で、さすがの息子もこの壁だけは越えられないのだろう。自分勝手な性格の息子でも、やはり最後の一線は寂しさも手伝ってか、いくら不満があろうと、譲歩するしかないらしい。これ以上”もっと”を望むなと言いたいのであって、これくらいで我慢しろと自分の身の丈をちゃんとわかっているのだ。

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