人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

地元のモーニングへの愛

岐阜では一日中モーニングをやっているのよ

 噂によると、岐阜市は喫茶代年間支出額全国第一位に輝いている都市らしい。そんな事実を知ったのは、朝日新聞の声欄に東京に住む岐阜市出身の女子学生の投稿を読んだからだ。「上京してすぐの日曜日、早起きして電車に乗った」とのことで、何処に出かけたかと思ったら、喫茶店激戦区の街、お茶の水だった。どこか変わっている店や面白い店を見つけて、地元の友だちに教えてあげたら、喜ぶだろうし、大いに盛り上がるだろうとワクワクして出かけて行った。ところが、お目当てのところはすべて休みで、開いていたのはチェーン店だけだった。それも「2時間近くも歩き回って、やっと一軒見つけた」体たらくで、その時はすでに、モーニングは終わって、ランチ営業になっていた。それで、彼女は心の中で、「岐阜では、一日中モーニングをやっているのよ」と叫んだ、いや、実際に大きな声で皆に教えてあげたかったのだ。子供の頃から、モーニングに親しみ、日曜日はワイワイガヤガヤと家族や友人たちと何時間もおしゃべりをしたという。だからこそ、地元のモーニングが懐かしくて堪らない。「喫茶店でホームシックになるなんて、思いもしなかった」と歎いている。

 思えば、私も昔上京した時は、東京の喫茶店と地元にある店との違いに大いに驚かされた。まず、おしぼりが出ないし、店によってはお水もない。それにコーヒーを注文しても、当たり前のことだが、コーヒーだけで、何もおまけがついてこない。ピーナツやら、トーストやら、茹で卵やらがいくら待ってもでてこやしない。こんなのはいくら何でも寂しすぎる。それでやっと気づいた、これが東京の喫茶店の流儀なのだと。”郷に入らば郷に従え”とはよく言ったもので、ない物ねだりをしても始まらないのだ。それ以来きっぱりと諦めて、フラストレーションが沸き上がるのを抑えている。

 おまけで思い出したが、外国にもおまけがあることを知って、困惑したと言うか、少し嬉しいような気持ちになったことがあった。この時のおまけはどうやら、料理を一品注文するとサービスで必ずついてくるということらしかった。あれはスペインのバルセロナサグラダファミリア聖堂にほど近いレストラン「ピカソ」での出来事だった。サグラダファミリアのライトアップした姿をいつまでも見ていたくて、テラス席を選んで座った。ちょうど夕飯の時間なので、ここで食べて帰ろうかと思って、メニューを見ると、ナポリタンと思しき写真があって、いや、というより、ひき肉も入っているので、これはさしずめミートスパゲティというべきだろうか。とりあえず、そのスパゲティとコーラを注文した。

 少し待っていると、瓶入りコーラとグラス(もちろん、氷は入っていない)、量が多めのスパゲッティ、それにフランスパンが山盛になっている皿が運ばれてきた。ええ~、これは頼んでないけどと言いそうになったが口には出せない。フランスパンはスライスしてあって、表面に何やら赤い果肉のようなものが塗ってあったので、「これって、いったい何なの?」と不思議でならなかった。その食べ物を見るのは初めてだったので、好奇心も手伝って、まずは味見をしてみようとフランスパンにかぶりついた。私の想像では、それはたいして美味しくないもののはずだった。だが、予想以上に美味しい、いや後を引く、やみつきになりそうな味で、あっという間に平らげてしまった。たかが、フランスパンのスライスだが、トマトの酸味とオリーブ油の相性が抜群だった。その時は知らなかったが、後で調べたら、それは「パン・コン・デ・トマート」というものらしい。作り方は実にシンプルで、フランスパンに生のトマトをこすりつけたら、オリーブ油をかけて、オーブンで焼くだけで出来上がりだ。あんな美味しいものが、こんな簡単に出来てしまうことに感動すら覚える。

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