人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

このまま結婚しなくてもいいかなあ

そんな生き方もあるのかと、目から鱗

 今一番私が楽しみにしているのは、NHKの夜ドラ『作りたい女と食べたい女』で、もう少しで終わってしまうかと思うと、寂しい限りだ。今回は、野本さんと春日さんが不動産屋で現実に直面した後、二人で話し合いをする。二人が同性カップルであることを隠そうとしたことは、お互いに自己嫌悪に陥ったことを確認し合った。友だちだと嘘をつかなければならない世の中に憤りを覚えても、どうにもならない。とにかく、このままでは一歩も前には進めなかった。さて、どうするとなったとき、助けになったのは、SNSで知り合った矢子さんだった。知り合いに家探しで困った経験がある人がいるらしく、最近では少ないながらもLGBT専門の不動産屋もあるというのだ。

 世の中の流れだろうか、もはやLGBTの人たちを差別する時代ではないらしい。普通の人と違ってはいても、なんら後ろめたさを感じる必要はなく、堂々としていていいのだ。だが、部屋を借りるのに、資格がいるとしたら、同性カップルはその範疇からはみ出しているのが現実なのだ。まだまだ世の中は、あくまで日本では外国と比べると、LGBTの人たちは理解されていないし、人々も寛容ではない。「どうして日本では同性婚が認められていないのですかねえ」と春日さんはため息をつく。

 正直言って、私は当事者ではないので、彼女たちの辛さがまるで人ごとのように思えてくる。ただ、彼女たちは気持ちを偽って生きるのが嫌なのだということは私にもわかる。同性同士の恋愛が他人には奇異に見えても、実際そうなのだから、それはそれで認めて欲しい、ということなのだろう。その点においては、私も大いに寛容に対処するべきだと思う。もしも、私の周りにLGBTの人たちが多くいて、それが当たり前の環境なら、違和感など感じずに済むだろう。つまり、生まれたときからそういった状況が普通に存在していたなら、それは常識となり、異論を唱えることはあり得ない。だが、現実にはそうでないから、「人を差別してはいけない」とか「寛容にならなければ」と自分を再教育しなければならないのだ。ここで問題になるのは、理屈としてはわかっていても、肌感覚と言うというか、心でまともに受け入れられるかということだ。この核心を突かれると、甚だ心許ない。人の心は移ろいやすく、また、瞬間瞬間でどうにでも変わる。実に厄介極まりなくて、頼りない。

 野本さんが会社の同僚の女性に部屋探しが難航していると悩みを打ち明ける。すると、彼女は今自分がやっている婚活の話を持ち出し、本当は結婚なんてしたくないのに、と自分を揶揄する。そもそも、婚活アプリを使いだしたのは、姉に子供が生まれたと実家の母親から言われたからだった。姉の次は今度は自分の番だとばかりの、どうしようもない親の圧を感じた。それで、結婚でも、いや、とにかく付き合う相手を見つけなきゃとなったが、内心ではあまり乗り気ではない。「皆が思っている、こうこう、こうあるべきということから、自由になりたいんです、私は」。だから、「このまま結婚しなくてもいいかなあ」と思うのだと言う。

 なんと、きっぱりとした、清々しい発言なのだろう。誰にも頼らなくても、ひとりで立派に生きていけるという自信と決意みたいなものを感じてしまった。考えてみると、大昔は、結婚は永久就職ともいえる経済的基盤の確立を意味したが、現在では精神的な面でも大いに重要だ。ふと、彼女に一抹の不安がよぎることはないのかとも思ったが、今を生きている人には余計なおせっかいだと自分が恥ずかしくなる。以前、ある女優さんが、「この仕事は明日があるかどうかわからない不安定な仕事ですが、不安をエネルギーに変えて私は生きています」と堂々と主張していた。「不安をエネルギーに変える」ということは、すなわち、行動あるのみ、アグレッシブに突き進むのみという意味だった。

mikonacolon