人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

診療所に行ってみたら

原因がわかったら、気分がスッキリ

 自分で認めたくはないが、やはり膝が痛い。特に右膝で曲げたり、伸ばしたりするときにズキンとくる。座布団の上に座るときなどは要注意だ。左膝からゆっくりと膝をつかないと、鋭い痛みが襲ってきて、思わず「痛っ、痛い!」と声を上げてしまう。我ながらなんとも情けない。最初この痛みに気付いた時は、よくある筋肉痛だとの認識で、そのうち治るだろうと簡単に考えていた。だが、あれからだいぶ時間が経ったのにもかかわらず、いっこうに痛みは消えてくれない。それどころか、日に日に痛みが増しているような気になってきた。

 初めのうちは静脈瘤が腫れて痛いのかと思っていたが、今回は違うようだ。なぜそう考えたのかと言うと、膝を曲げようとすると、膝の裏の部分に何かが挟まっていて、曲げるのを邪魔しているように思えたからだ。もちろんそれが何かはわからないが、何かつっぱるような感覚がして、スムーズに膝の曲げ伸ばしができなかった。こんなとき、どうしたらいいのだろう。どうしても気になるのから、我慢できないのなら、さっさと、病院に行って診てもらえばいい。だが、できる事なら行かないで済ませたいと私は考えた。その理由は、自分の醜い足を、つまり、静脈瘤で張り巡らされた地図のようになっている足を、他人に見られたくなかったからだ。あれこれ言われるのが嫌だったし、これまでその足で何とか生活に支障なく過ごせていたからだった。

 だが、今回だけは、そんなことを言ってはいられなくなった。それで、こんな時は一体、どこの病院に行けばいいのかと真剣に考えた。いつもなら、すぐにネットで検索するのに、今回はそれをしなかった。昨今は昔と比べると、自分が本当に知りたい情報よりもどうでもいいサプリメントか何かの宣伝に行きつくことが多いと感じていたからだ。やはり、こんな時は整形外科に行った方がいいとも思ったが、近所にある病院はいつも朝早くから人が受付の順番を取るために並んでいた。毎朝、散歩の帰りに長蛇の列を目撃していたので、私などが昼間ひよっこリ行ったところでどうなるものでもない。えらく長く待たされることは想像に難くない。

 少し歩けば、大通りの交差点近くに良さそうな整形外科があったが、ここも午後の順番を取るために長蛇の列ができているのを見たことがあった。そう言えば、近所に整形外科と書いてある建物があるにはあったが、そこに人が出入りするのを見たことがなかった。とても行く気にならないので、考える余地はない。では、いったいどこへ行ったらいいのだろう。すると、行くべきところ、それも何かある度に躊躇なく行ける病院があることを思い出した。ガス詰まりで胸が苦しくて堪らない時も、肩が痛くてどうにもならない時も、巻き爪で苦しんだ時も、いつも気軽に言っていた場所があった。

 それは家からは歩いて20分ほどの、散歩コースの途中にある診療所だ。毎年インフルエンザの予防接種もそこでして貰っているし、何かある度に通っているので、緊張感はほとんどない。待たされることを覚悟して、図書館で借りている『羊飼いの暮らし』を持っていく。その時の私は原因究明を望んでいたわけでもなく、ちょっと診てもらう程度の気持ちだった。診療科目に整形外科はないので、たいして期待はしなかった。幸運にもたいして待たされることもなく、診察室に呼ばれた。

 だが、それから起こったことに目から鱗だった。私の予想ではレントゲンかなんかを取って、湿布や痛み止めの処方箋を出してもらって終わりだった。そんな予想をいい意味で裏切るように、先生は症状を一通り尋ねると、「では、奥の部屋で超音波で膝を見てみましょう」と私を促した。何?超音波?へえ~、今どきは超音波で中がどうなっているのか見られるのか。そう思ったら、一気に私の中にあった固定観念が崩れ落ちた。ベッドに横になって、右ひざを画像で見てもらうと、膝の表側は問題なしで、今度はうつぶせになって裏を見てもらったら、原因がわかった。

 なんと、私の右膝の裏には袋状の物があって、それが膝の曲げ伸ばしを邪魔していた。どうりで、何か突っ張る感覚があるわけだ。その袋状の物の中には水が溜まっているらしい。病名はベーカー嚢腫といって、重症になると、注射器で中に溜まっている水を抜くのだと言う。先生によると、その方法は癖になるらしく、あまり積極的にやりたい治療法ではないらしい。はっきり言って、私の場合は、右ひざが痛いことは痛いが、歩くのに支障があるわけではなく、階段の上り下りもできる。それで、先生は今すぐに注射器でどうこうというような処置はせず、「少し様子を見ましょう」ということになった。すぐに何とかしてもらいたい、そんな気持ちなど全くなかった私は、原因がわかっただけで十分満足し、スッキリとした気分になれた。

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