人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

行列に並びますか

長蛇の列、気になります

 昨日お昼休みに同僚に誘われて、久々にオフィスから外に出た。いつもなら会社のテラスで自販機のコーヒーを飲んで、おしゃべりして終わるのに、その時は外の空気を思いきり吸いたくなった。見上げれば青い空、街行く人もなんだかのんびりして、穏やかな時間を満喫しているようだ。大通りを歩いていたら、何やら路地の方に行列ができているのが見えたので、「いったい何事?」と早速確かめに行った。それはあと数日で閉店することになっているきしめん店の行列で、私たちは「いったい、今ごろなんで行列作るの?」と訝しく思った。いつも通りかかっていて、人はたいして入っていないはずだったが、たいして気にもしていなかった。麺類がたいして好きではない私たちはその店に一度も食べに行ったことはなかったからだ。名古屋のきしめんが主なメニューで他にうどんのセットメニューもあったが、全体的に値段は高めだった。

 だが、どうして閉店すると聞いたら、こんなにも人が集まるのだろう。訳が分からない。そう言えば、新聞にもうすぐ閉店する店主がこんな感想を寄せていたのを思いだした、「もっと早く来てくれれば、閉店せずに済んだのに」(笑い)。ごもっともである、お客さんがいつもいつも途絶えることなく来てくれたなら、こんな事態に追い込まれることはなかったのだ。でも現実はそう上手くはいかなかったのだから、飲食店の経営は難しい。

 行列で思い出すのは、今では滅多に行くことがなくなった地域にあるそば店のことだ。私は知らなかったが、この店は知る人ぞ知る名店らしく、朝早くから人が列を作っていた。ひょっとしてと思って、店の看板に書かれていた店名でネットで検索してみたら、なんとヒットしたことはしたのだが、本当にその店なのかは疑わしい。私がその店のことを知ったのには全くの偶然で、それまであんな場所にそば店があることすら知らなかった。今は早朝だが、以前は7時過ぎから散歩に出かけていて、ちょうどいつも8時少し前にその店のある手前の路地を横切って家に帰って来るのが習慣になっていた。その店のことなんて眼中になかったし、それどころかそこにそば店があることすら知らなかった。でも、ある日ふと目をやると、人が何人か、いや5,6人ぐらいの人が店の前に列を作っているのが見えた。こんな朝早くから一体何事!と思ったのがきっかけで、その店のことに興味津々になったが、未だにその店のそばは食べたことがない。

 その理由は、店の営業時間が午前11時から午後2時までと短く、土日は休みで時間が合わないからだ。店構えは物凄くシンプルで、以前はきっと何か飲食店ではない別の業種の人が使っていたであろうと想像してしまうほどだ。店の外観は全面ガラスで、白いスプレーがかかっていて中がどうなっているかは全く見えないようになっている。それがまた謎が謎を呼んで、どうしても中を見たい、いやこの店のそばを食べてみたいという気持ちにさせられる。好奇心に駆られた私は、周りに誰も人がいない時間帯にその店の前まで行ってみたことがある。店の看板しかないと思ったら、入り口のガラス戸に張り紙が貼ってあることに気が付いた。

 そこには次のように書かれていた。「中華そば1200円、券売機はお釣りが出ないので代金はきっちりご用意ください。営業時間午前11時から午後2時。無くなり次第終了」。なんともそっけないお知らせだが、肝心かなめなことはちゃんと伝わっているから、文句も言えない。それにこの貼り紙を見て初めて、この店のそばは蕎麦ではなくて、中華そばだとわかった。そのあと、偶然に通りかかったら、入口の扉が開いていてちゃっかり店の中がどうなっているかをつぶさに見てしまったこともあった。店の中はカウンターの席がほとんどで、テーブル席があったかどうかは定かではないが、おそらく立ち食いうどんのような形式で、食べ終わったらさっさと帰るのが当たり前なのだろう。それに店の前には長蛇の列があることは十分承知しているので、自然と気がせいて長居などできるはずもない。

 今ではすっかり忘れていた行列のできるそば店だが、機会があったら是非一度行って見るのもいいかもしれないとも思う。が、きっと私は行けそうにもない、いや行かない確率の方が多い。なぜなら、今の私にはもうどうでもいいことだから。

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