人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

哲仁王后、俺がクイーン?

哲宗やっている俳優さんは何者!?

 韓国ドラマ『哲仁王后、俺がクイーン?』は放送が終わってからだいぶ経つのに、未だに後を引くドラマだ。ビデオに録って、後からCMを飛ばして見ていたが、面白いので、今でも何度も見てしまう。実は最初は番組表のタイトルを見て、なんだかお茶らけていて、くだらないと敬遠していた。だいたいが、大の男が女性の身体の中に入り込み、しかもそれが王妃だなんて、想像もつかなかった。今まで現代の人間がはるか昔にタイムスリップし、その時代の人として生きるドラマはあったが、それは皆同性で、異性だなんてありえなかった。

 だが、考えてみると、そのありえないことを現実にしたのだから、面白くないはずがない。さらに現代の男性が入り込んだ身体の主の王妃を演じるのが、シン・ヘソンさんだから、なおさらだ。シン・ヘソンさんと言えば、思い出すのは『黄金の私の人生』で、不平不満を隠さない、強烈なキャラクターの契約社員を熱演していた。ドラマのヒロインが明るくて、性格がいいのがステレオタイプなら、彼女はそれとは一線を画していて、がむしゃらでなりふり構わず、どん欲だった。「金持ちってどうしてあんなに性格が悪いのかしら」と毒突くシーンなどは最高だった。厳しい社会の中でがんじがらめなのに、それでも懸命に自分の道を探す姿に感銘を受けた。

 そんなシン・ヘソンさんだから、女性の身体に男性の心が入り込んだ役はまさにはまり役だった。見かけは女性のはずだが、言葉遣いやしぐさはどう見ても男性で、それがやたら可笑しかったが、そのうち慣れてしまうのだから不思議だ。最初はこの先どうなるのだろうと心配になったが、最後には王様と相思相愛になってしまうのだから仰天せずにはいられない。そもそも男性の心が女性の身体に入り込むというストーリーには何らかの意図があるのは明かだ。でも当の男性が王様に恋してしまうという展開には本人のみならず、当方も視聴者として困惑せずにはいられない。だが、本音を言うと、哲仁はいくら褒めても褒め足りないほどいい奴で、立派な志を持った王なのだった。こちらもやたらと感情移入してしまって、そんなことがあったとしても仕方がないかと思ってしまうのだ。

 実は本物の王妃は哲仁とあまり上手く行っていなかった。だから、ドラマの展開では現代からやってきた男性、それもシェフがふたりの仲を取り持つという役割を果たしたことになる。目の前の王妃が中身も本物の王妃だと疑いもしない王様は、しとやかな女性とは180度違うハチャメチャな王妃を最初は毛嫌いしたが、いつの間にか新鮮に感じるようになった。二人の心の距離がだんだんと近づいていく様子を垣間見るのが楽しい。王様にはすでに心に決めた女性がいたので、この展開は最初はあり得ないと思われたが、結果的には”まさか”が、”なるほど”に変わった。

 哲仁はこのドラマでは王の鏡ともいうべき人物として描かれているが、表向きは愚鈍で、左大臣の操り人形のように振る舞っていた。なぜかと言うと、それは殺されないためだった。ぼんくらで、毎日無為に過ごしているかのようにみえた王が、ある日突然切れのある動きを見せて、その場にいる者たちを圧倒する。その瞬間、私は思った、この俳優さんは、この人はいったい何者!?と。それくらいその人には存在感があった。その人はキム・ジョンヒョンという名前で、ネットフリックスの『愛の不時着」にも出ていたとネットに書いてあった。そうか、勝手にわかった気になって真面目にドラマを見ていない私は後悔したが、後の祭りだ。

 このドラマのもう一つのお楽しみは、王妃の中に住み着いているシェフの料理のシーンだ。端午の祭りの席でのメニューでは、じゃがいもをトルネード風に串にさして、龍神イモと名づけて出した。「これはタダのじゃがいもではないですか」などと馬鹿にされたが、一口食べてみたら「美味しい」と一同をうならせた。敵対勢力に阻まれて、肉の配給を止められると、現代のように畑の肉である大豆でハンバーグを作った。それをバンスで挟みハンバーガーとして出したら、またもや好評だった。デザートの羊羹は占いのできる串に刺したフォーチュンスイーツで、おしゃれにアレンジしてあった。

 このドラマは俳優の演技とストーリーを心で、工夫に溢れた料理を目で楽しめて、一石二鳥でお得だというほかない。それに面白くて、怖くもあって、この上なく味わい深いドラマだ。

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